Presentations -
-
環境サンプルを対象としたCARD-FISH法による珪藻捕食性ラビリンチュラ類Aplanochytriumの観察
佐伯 奈緒子,岩本 望,桑田 晃,本多 大輔
日本藻類学会第48回大会 (神戸大学) 2024.3 日本藻類学会
Event date: 2024.3
Country:Japan
ストラメノパイルに属する無色従属性の単細胞生物ラビリンチュラ類Aplanochytriumは,最近になって主要な一次生産者である珪藻を積極的に捕食することから,生態系の中で重要な役割を果たしている可能性が示唆された。特にラビリンチュラ類はドコサヘキサエン酸(DHA)を豊富に生合成し蓄積することから,DHAを生合成できない魚類への供給源としての影響力についても注目されている。そこで,ラビリンチュラ類の現存量の把握が求められているが,単純な球形の形態であることから,環境サンプル中での同定が難しく,環境DNAに対して定量PCR法を適用して細胞数を推定するといったアプローチがとられている。しかしながら,定量PCR法では細胞が単独なのかコロニーなのか,何かに付着しているのか,消化管に入っているのかなど,存在する状態を把握することができない。実際,環境海水のメタ18S解析では,Aplanochytriumの栄養細胞の直径が約10 µmにも関わらず,全リード数の4分の1程度が20〜180 µmの分画に確認できる状況であり,環境中での状態についての解明が待たれていた。そこで,本研究ではCARD-FISH法を適用し,特異的なプローブを設計して,Aplano¬chytrium系統群を蛍光染色し,環境サンプルの観察を行った。その結果,細胞は数十個の細胞がコロニーを形成した状態で観察された。大きな細胞塊として存在することで,中間的な捕食者を介さずに、食物網の上位の捕食者に取り込まれている可能性があり,生態効率を考慮した時に,単細胞状態として存在する場合の数倍の影響力を持つ可能性が示唆された。
-
ラビリンチュラ類アプラノキトリウム系統群の海洋における現存量と生態学的影響力
森本冬海・浜本 洋子・庄野 孝範・上田 真由美・桑田 晃・谷内 由貴子・黒田 寛・田所 和明・辻村 裕紀・宮岡 利樹・茂木 大地・中井 亮佑・長井 敏・松本 朋子・菊地 淳・本多 大輔
日本藻類学会第48回大会 (神戸大学) 2024.3 日本藻類学会
Event date: 2024.3
Country:Japan
多価不飽和脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(DHA)を生合成し,珪藻を捕食する能力のあるラビリンチュラ類アプラノキトリウム属群に注目し,北太平洋親潮域における現存量を計測した。その分布は春から秋の親潮域の有光層に集中する一方で,沿岸親潮域や冬期の低水温海域では低い細胞密度となった。これらの分布パターンやChl a濃度と正の相関があることから,環境中でも捕食者であることが強く示唆された。なお,本海域におけるアプラノキトリウム属群の年間平均バイオマスは光合成生物の最大で約2%程度であった。一方,DHAの供給源については,現存量の多い渦鞭毛虫類が注目されていたが,Hirai et al. (2018)のカイアシ類の消化管内容物のメタ18S解析の結果は,アプラノキトリウム類のリード数が逆転しており,DHA供給量は渦鞭毛虫類の数倍となることが考えられた。現存量から推定されたアプラノキトリウム類のDHA量と,亜寒帯域で優勢するカイアシMetridia属のDHA量の比率は1:20であり,生物濃縮を支える最大の供給源となっている可能性が示唆された。
-
安定同位体脂肪酸を用いたラビリンチュラ類Aplanochytrium 属株におけるDHA合成経路の追跡
橋本 航太朗、山田 えり、石橋 洋平、伊東 信、今井 博之、本多 大輔
日本藻類学会第48回大会 (神戸大学) 2024.3 日本藻類学会
Event date: 2024.3
Country:Japan
原生生物ラビリンチュラ類は海洋に普遍的に存在する単細胞真核生物で、DHA(C22:6)などの多価不飽和脂肪酸を生合成することから,魚類などの高次捕食者のDHAの大元の供給源の候補者として注目されている。中でもラビリンチュラ類に属するAplanochytrium 属株は,最近になり珪藻から栄養摂取することが明らかになった。その際の脂肪酸分子種の変化を経時的に調べると,EPAが減少しDHAが増加していた。この結果は、Aplanochytrium 属株が,脂肪酸鎖伸長酵素(ELO)/脂肪酸不飽和化酵素(DES)経路によって珪藻から摂取したEPAをDHAに変換していることを示唆している。一方で、Aplanochytrium 属株を有機培地で単独培養した際には、オレイン酸からDHAまでの中間産物がほとんど検出されなかった。そこで本研究では、Aplanochytrium 属株がどのような経路でDHA合成をしているのかを明らかにするために,13C18オレイン酸を前駆体としてAplanochytrium 属株の脂肪酸生合成経路を調べた。また珪藻から摂取したEPAがDHAに変換される経路を明らかにするために,13C18オレイン酸を珪藻培地に添加し、珪藻内で標識EPAを合成させ、その珪藻とAplanochytrium 属株の二員培養を行った。
その結果、アプラノキトリウム属株の単独培養ではDHAは合成されたものの、C20:4 をEPAまたはC22:4に変換する経路の働きが弱いことが分かった。一方でEPAを豊富に蓄積する珪藻との二員培養においては、EPAが効率よくDHAに変換されていることが示された。この結果は、珪藻を捕食するようになったアプラノキトリウム属株は、珪藻から摂取したEPAをDHAに変換する経路は維持され活発に働いているが、EPAよりも上流の合成経路は必要となくなったことで減衰したことを示唆している。 -
Tomi Morimoto, Yoko Hamamoto, Takanori Shono, Mayumi Ueda, Akira Kuwata, Yukiko Taniuchi, Hiroshi Kuroda, Kazuaki Tadokoro, Yuki Tsujimura, Toshiki Miyaoka, Taichi Mogi, Ryosuke Nakai, Satoshi Nagai, Tomoko Matsumoto, Jun Kikuchi, Daiske Honda
The 36th annual meeting of Japanese Society of Microbial Ecology 2023.11 Japanese Society of Microbial Ecology
Event date: 2023.11
Country:Japan
Aplanochytrium spp. (Labyrinthulea), are unicellular heterotrophs that prey on diatoms and are relatively abundant in the ocean. Labyrinthuleans produce polyunsaturated fatty acids and are potential sources of DHA. Aplanochytrium abundance was estimated by qPCR in the North Pacific subarctic region. Aplanochytrium cells were abundant from spring to autumn in subarctic waters characterized by low salinity. In these areas, the number of reads for diatoms in meta-18S analysis is also large, suggesting that Aplanochytrium cells prey on diatoms even in the environment. The biomass of Aplanochytrium spp. was equivalent to ca. 1% of phytoplankton, suggesting that they play an important role in a primary predator.
-
Kotaro Hashimoto, Eri Yamada, Yohei Ishibashi, Makoto Ito, Hiroyuki Imai, Daiske Honda
The 36th annual meeting of Japanese Society of Microbial Ecology 2023.11 Japanese Society of Microbial Ecology
Event date: 2023.11
Country:Japan
Labyrinthuleans are known to synthesize DHA (C22:6) and are potential marine sources of DHA. Aplanochytrium spp. have been shown to prey on diatoms, and are possible to have a large impact as primary predators. We traced the products of fatty acid biosynthesis by using stable isotopes. In Aplanochytrium, DHA was synthesized, but the activity of the pathway from C20:4 to EPA (C20:5) or C22:4 was weak. In two-membered culture with EPA-rich diatoms, EPA was efficiently converted to DHA. This suggests that Aplanochytrium spp. have acquired the ability to prey on diatoms, leading to a decrease in the activity of the EPA synthesis pathway.
-
ラビリンチュラ類アプラノキトリウム類の海洋環境中における現存量推定と予想される役割
森本 冬海, 浜本 洋子, 庄野 孝範, 上田 真由美, 桑田 晃, 谷内 由貴子, 黒田 寛, 田所 和明, 中井 亮佑, 長井 敏, 松本 朋子, 菊地 淳, 本多 大輔
第8回 ラビリンチュラシンポジウム プログラム (筑波大学) 2023.8
Event date: 2023.8
Country:Japan
-
蛍光タンパク質遺伝子の導入により核を標識した Parietichytrium 形質転換株を用いた交配実験
瀬尾 貫太、木元 佑磨、馬詰 悠、本多 大輔
第8回 ラビリンチュラシンポジウム プログラム (筑波大学) 2023.8
Event date: 2023.8
Country:Japan
-
CARD-FISH 法によるアプラノキトリウムの特異的染色条件の決定
佐伯 奈緒子,岩本 望,桑田 晃,本多 大輔
第8回 ラビリンチュラシンポジウム プログラム (筑波大学) 2023.8
Event date: 2023.8
Country:Japan
-
安定同位体脂肪酸を用いたアプラノキトリウム属株の珪藻捕食時の DHA 合成経路の追跡
橋本 航太朗、山田えり、石橋 洋平、伊東 信、今井 博之、本多 大輔
第8回 ラビリンチュラシンポジウム プログラム (筑波大学) 2023.8
Event date: 2023.8
Country:Japan
-
Labyrinthula sp.で観察された複数の細胞が出入りするシスト様構造
樋口 里樹, 名久井 博之, 本多 大輔
第7回ラビリンチュラシンポジウム (福井県立大学 小浜キャンパス) 2022.12
Event date: 2022.12
-
CARD-FISH法によるアプラノキトリウムの特異的染色法の開発
岩本 望,本多 大輔
第7回ラビリンチュラシンポジウム (福井県立大学 小浜キャンパス) 2022.12
Event date: 2022.12
-
パリエティキトリウムの核融合の観察に向けた,核移行シグナルを付加した赤色蛍光タンパク質遺 伝子の 導入
瀬尾 貫太,木本 祐磨,馬詰 悠,本多 大輔
第7回ラビリンチュラシンポジウム (福井県立大学 小浜キャンパス) 2022.12
Event date: 2022.12
-
ラビリンチュラ類の現存量推定にむけた定量PCR法の再検討
森本 冬海,本多 大輔
第7回ラビリンチュラシンポジウム (福井県立大学 小浜キャンパス) 2022.12
Event date: 2022.12
-
ラビリンチュラ類パリエティキトリウム属株の核を標識する蛍光タンパク質遺伝子の導入
木元 佑磨, 馬詰 悠, 森本 冬海, 本多 大輔
日本藻類学会第46回大会 2022.3
Event date: 2022.3
ラビリンチュラ類の有性生殖に関しては,十分に明らかになっているとは言えない状況であるが,Parietichytrium属では,貧栄養状態になると有性生殖に関連する遺伝子の発現量の上昇と,遊走細胞の融合が観察された。さらに,この融合については株間において“+”と“−”のような交配型の二極性に相当する現象が確認された。しかしながら,ラビリンチュラ類では外質ネットの細胞膜を共有して,近隣の細胞が連結することが頻繁に観察されるため,細胞の独立性は比較的低く,遊走細胞の融合が接合や受精に相当するかは結論づけられていない。そこで,核の融合が起こっているかを確認するため,Parieti¬chytrium属の“交配型”の異なる株のそれぞれに対して,核移行シグナル配列を付加した異なる色の蛍光タンパク質遺伝子を導入して,標識された核の挙動の観察を目指すことにした。まず,Parietichytrium属での恒常的な発現が予想されるプロモーター,核移行シグナル配列,蛍光タンパク質遺伝子,ユビキチン由来のターミネーターの各配列が並んだプラスミドの作製を行った。そして,このプラスミド由来の線状DNAをマルチパルスエレクトロポレーションで遺伝子導入を行った結果,蛍光をもつ形質転換体を獲得できた。今後は候補となる複数のプロモーターをついて,蛍光量から発現量の比較を行う予定である。
-
パリエティキトリウム属株の細胞核の蛍光染色を目指したプラスミド作製
木元 佑磨, 森本 冬海, 馬詰 悠, 本多 大輔
第6回ラビリンチュラシンポジウム (広島大学・学士会館レセプションホール) 2021.12
Event date: 2021.12
-
安定同位体脂肪酸を用いたアプラノキトリウム属株のDHA生合成経路の解析
山田 えり, 橋本 航太朗, 石橋 洋平, 伊東 信, 本多 大輔
第6回ラビリンチュラシンポジウム (広島大学・学士会館レセプションホール) 2021.12
Event date: 2021.12
-
大阪湾におけるオブロンギキトリウム類の現存量の推定
森本 冬海, 浜本 洋子, 上田 真由美, 本多 大輔
第6回ラビリンチュラシンポジウム (広島大学・学士会館レセプションホール) 2021.12
Event date: 2021.12
-
漁場環境を支える小さきもの:ラビリンチュラ — 魚類のDHAはどこからくるのか — Invited
本多 大輔
第181回海洋フォーラム「赤潮はどこまで解明されたか?―最新科学が明らかにする海の素顔―」 (リモート) 2021.5 公益財団法人笹川平和財団海洋政策研究所
Event date: 2021.5
-
ラビリンチュラ類Aplanochytrium 属株が捕食する微細藻類の解明
宮岡 利樹,本多 大輔
日本藻類学会第45回東京大会 (東京(オンライン)) 日本藻類学会
Event date: 2021.3
原生生物であるラビリンチュラ類は,世界中の海洋に生息し,環境中の有機物を分解吸収する分解者として認識されてきた。しかし最近,Aplanochytrium属株が生きている珪藻Skeletonema属株を捕食することが明らかとなり,生食連鎖の一部を担っていることが示唆された(Hamamoto & Honda, 2019, PloS ONE 14: e0208941)。そこで本研究では,Aplanochytrium属株と多様な微細藻類を二員培養することで,珪藻以外の微細藻類を捕食の対象としている可能性を調査し,その生態学的な役割の解明に向けた基礎情報を蓄積することを目的とした。その結果,シアノバクテリアについては捕食されている様子などは観察されなかったが,ハプト藻類および渦鞭毛藻類,緑藻類については捕食の対象とする可能性が示された。ただし,いずれもSkeleto¬nema属株との二員培養で観察されたほど,その捕食量や細胞の反応は顕著ではなかった。これらの微細藻類は外洋でも豊富に存在し,生態学的にも重要な一次生産者であると認識されており,ラビリンチュラ類が影響を及ぼす範囲について,改めて検討が必要なことを示している。
-
環境DNAとしてのみ認知されるラビリンチュラ系統群の分離株確立への試み
石原 朋樹,森本 冬海,谷内 由貴子,奥西 将之,本多 大輔
日本藻類学会第45回東京大会 (東京(オンライン)) 日本藻類学会
Event date: 2021.3
ラビリンチュラ類はストラメノパイルに属する葉緑体を持たない真核微生物である。海水,藻類やデトリタス,動物プランクトンの糞便ペレットなどの様々な基質から普遍的に分離されるため,海洋生態系において重要な生物として注目されている。しかし,これまでの環境DNAの網羅的解析で認識された主要群の中には,分離株の報告がなく,その学名はもちろん,形態を含む性状が全く不明の系統群が複数存在している。よって,生態学的役割の解明には,これらの未分離の主要系統群に位置するラビリンチュラ類について,他生物との捕食−被食関係や増殖特性などの情報を蓄積することが不可欠な状況となっている。そこで本研究では,沿岸や外洋域において環境DNAとしてのみ認知されている系統群の株を確立することを目指した。海水や泥, 動物プランクトンなどの採取物に対して,植物性や動物性の様々な釣り餌を使用し,抗生物質の入った寒天培地に塗布することで分離を行った。現時点では,目的とする未分離の系統群に位置する株の確立には至っていないが,AplanochytriumやUlkenia,Schizochytriumなどの系統群の株が分離できていることを確認した。