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NAKAMURA Soichi

Position

Associate Professor

Research Field

Humanities & Social Sciences / Philosophy and ethics

Homepage URL

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Profile

講義ノート 2022フレッシュマンセミナーより



米国留学に学んだリベラルアーツ


新入生の皆さん、はじめまして。本日の担当の中村聡一と申します。
本日は、”米国留学に学んだリベラルアーツ”というテーマで話をします。
コロナにはじまり、ウクライナ危機、延いては第三次世界大戦の話まで耳にするところが昨今の世界情勢です。
当学部は、皆さんご承知とは思いますが、”留学”に前向きです。
しかしながら、この世界情勢は、当学部にとっても、皆さんのなかで留学に前向きな方々にとっても、どちらにも、かなり強いアゲインストです。
この前提で本日の私の話をお聞きください。
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リベラルアーツを基礎にする米国の大学制度

私が本日のテーマで話ますところの”リベラルアーツ”は西洋の古典教養を指しますところ、米国のアイビーリーグを中心にした世界的なエリート校にて学部教育のコアに位置づけられます。
アイビーリーグには、私が通いましたニューヨーク・マンハッタンのコロンビア大学をはじめ、ハーバード、プリンストン、イェール、ブラウン、ダートマス、コーネル、ペンシルベニアのアメリカ東部の最古参の8校が名を連ねます。
これらの大学は、それぞれがノーベル賞受賞者を100名規模で輩出する世界最高峰の研究機関であり、また、米国大統領をはじめとする政財界のトップレベルの人材の養成機関でもあります。
各領域の研究大学院や、ビジネススクール、ロースクール、グローバル政策、メディカルスクールなどのポストグラジュエート・プログラム(post graduate program 大学院)には、米国人のみならず、世界中からの、選びに選ばれた学生が集います。
リベラルアーツは、これら多岐にわたる領域・分野での世界最高峰学術プログラムの、その中核に位置づけられるものであります。
”学部教育”(undergraduate program)にてこれが行われます。
コロンビア大学では、理系、文系を問わず、すべての学部生が修得すべきとされます。
哲学や文学、芸術、サイエンスなど多岐にわたる領域の科目群から成り立っています。
それら領域での古典に学問や諸芸術文化の興りを探し、今日までの発展を学びます。
皆さんと同年代の学部生の段階で、じっさいの古典文献や諸作品に触れ、人間の生み出した諸分野での叡智を自分のものにしていきます。

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本番アメリカでもごく少数のエリートしか受講できないリベラルアーツ

ここまでの話で、かなり贅沢な教育であることがおわかりでしょう。
これはそのとおりで、だからこそ、それを教えられるだけの教育リソースを有する大学群は全米4千といわれる大学・短期大学のうちのほんのごく一部が”リベラルアーツ・カレッジ”と呼ばれ、世界大学ランキングのトップ10常連校のアイビーリーグ校を中心にしたごく少数の大学の学部教育がそれに該当するわけにあります。
これがどれだけ少数かは、日本国内で最難関のエリート校とされる東大、京大の2校の学部生の数と比較するとよくわかります。アイビーリーグ8校すべての学部生数を足しても東大、京大2校よりも少ない。アメリカの人口は日本のおよそ3倍です。たとえアメリカ人であっても、アイビーリーグ教育を受けることの狭き門の度合いがおわかりでしょう。

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私のプロジェクト授業

なぜこの話をしたか。
それは、わたしがここ何年も試行錯誤で行っていますプロジェクト授業が、このアイビーリーグで教えるリベラルアーツの導入だからです。
皆さんに私の著書『教養としてのギリシャ・ローマ~名門コロンビア大学で学んだリベラルアーツの真髄』の”はじめに”の部分を読んでもらいました。
ここまでに述べた内容が記されると思います。
必ずしも”留学”によらないでも、私を通して、世界最高峰の教育の一端を学んでください。それが、私から皆さんに伝えたいことであります。
私のオファーするプロジェクト授業は、次の2つです。

前期: 政治哲学「正義論」
後期: 自由主義経済「国富論」

本日は、前期開講の、政治哲学「正義論」について述べます。今から皆さんには、私の授業の第1講「力は正義か」の話をします。これを通してどのようなものかを感じてください。
初回の授業でありますので、とくに事前にリーディングをしてなくとも話にはついていけるように配慮はしてますので、大丈夫と思います。
パワポ資料を教室スクリーンに映します。Zoomでこのまま講義ノートを見ていきますので、両方をあわせてみていってください。
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第1講「力は正義か」
(参照文献)
・プラトン著『国家』
・アリストテレス著『政治学』
・マルクス・アウレーリウス著『自省録』
・アウグスティヌス著『神の国』『告白』
・トマス・アクィナス著『神学大全』
・マキャベリ著『君主論』
・トマス・ホッブス著『リヴァイアサン』
・ジョン・ロック著『統治二論』
・ジャン・ジャック・ルソー著『社会契約』
・ヘーゲル『歴史哲学講義』
・アダム・スミス著『国富論』
・カール・マルクス『共産党宣言』
・マックス・ウェーバー著『権力と支配』
・リンカーン「分かたる家は立つこと能わず演説」「リンカーン・ダグラス論争」「クーパー・インスティティテュト演説」「ケティスバーグ演説」
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西洋哲学の起源は一般に古代ギリシアで発祥したヘレニズムといわれる。
なかでも、ソクラテス、プラトン、アリストテレスの3名が中心に位置づけられる。
3名は師弟関係にあり、互いに影響を与えた。
ソクラテスには著作はない。弟子のプラトンがソクラテスを主役にさまざまな登場人物と語り合う対話形式の著作を多数残したことからその思想が後世に伝わった。
アリストテレスはさまざまな学問に通じ、それぞれに業績を残した「万学の祖」と称される。
なかでも「政治哲学」におけるかれらの業績は、科学が飛躍的に進んだ現代において未だに優れた評価を受け続けている。
それはなにか。
「徳」に立脚した国政を説く。
この中核にあたるのが「正義」である。


以下、割愛



最後に

わたしの自己紹介をしておきます。
コロンビアに行ったことは自明でありましょうが、それ以外にも他分野でのさまざまな経験を有しています。
まず、若い頃は、わたしはテニスのプロ選手でした。数多くの選手を輩出した、今ではテニスの世界の名門とされる東京・桜田倶楽部の初代のNo.1選手でした。一緒にプレーした後輩には、松岡修造くんもいます。ジュニアの頃にはウインブルドンにも出場しましたし、世界ランキングも7位までいきました。(*国内ではむろん1位です。)
皆さんのお父さん、お母さんの世代(五十代半ば)で学生時代からテニスをやっていた方がいれば、おそらく私の名前は知っていると思います。
コロンビアの学部を卒業したあとは、やはりコロンビアのグローバル政策大学院でファイナンスを学びました。コロンビアのグローバル政策大学院は、ハーバードのケネディ・スクールを抑えて、この分野で全米1位の評価を維持しています。
国際会計事務所KPMGに、卒業後に就職して、グローバルM&A案件のファイナンシャル・アドバイザーを長くやりました。現在は150ヵ国以上に20万人のスタッフを擁するこの世界企業にて当時は最年少のパートナー(幹部社員)にまでなりました。著作もありますので、関心あれば読んでみてください。4階メディアセンターにおいてあると思います。
これまでにテニスや仕事を通じて世界60~70ヵ国、主要都市のほとんどに行ってますが、”神戸”という土地がなぜか肌にあっているようで気に入り住み着きました。
そういう次第で、甲南で、皆さんにお会いすることになりました。
なにかの縁でありましょう。


わたしが甲南にいるのも奇遇ですし、皆さんと出会うのもそうです。
じっさいにやり取りするのは、プロジェクト履修生の、皆さんのうちでもごくわずかになりますが、チャレンジしたいと思う方は、その場にて次回お会いいたしましょう。
以上、本日はこれで終わりたいと思います。


External Link

Graduating School 【 display / non-display

  • School of International & Public Affairs - Columbia University in the City of New York   Graduated

Campus Career 【 display / non-display

  • KONAN UNIVERSITY   Hirao School of Management   Associate Professor

    2009.4

 

Books and Other Publications 【 display / non-display

  • (planned) 12歳までに学ぶリベラルアーツの素養(仮)

    ( Role: Sole author)

    2025 

  • (planned) プロが教えるMBAファイナンス(仮)

    ( Role: Sole author)

    2024 

  • (planned) 思想文学論(仮)

    ( Role: Sole author)

    2024 

  • (planned) リベラルアーツがもっと面白くなる本(仮)

    ( Role: Sole author)

    2024 

  • (coming sometime in 2023) 歴史経済論(仮)

    ( Role: Sole author)

    2023.12 

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Review Papers (Misc) 【 display / non-display

  • 戦争、分断、格差…「力」の前に「正義」は無力なのか コロンビア大学名物授業に学ぶ政治哲学の意味

    東洋経済オンライン   2023.2

     More details

    Authorship:Lead author  

    アメリカ・コロンビア大学でリベラルアーツ教育を修め、その後グローバルに展開する世界最大級のコンサルティング会社KPMGの日本人幹部社員(パートナー)としての経験をもつ政治哲学者の中村聡一氏。このたび『「正義論」講義』を上梓した氏が、世界標準の「正義論」を通して、ウクライナ紛争など現代の世界情勢について考える意味を語る。
    昨今の政治情勢に強く想う。ロシアによるウクライナへの侵攻は、西洋哲学の根源にかかわる問題だ。

    「正義論」講義: 世界名著から考える西洋哲学の根源
    『「正義論」講義』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら)
    その起源は、今から2400年以上前の「ソクラテス×トラシュマコス論争」にまで遡る。これについて、ソクラテスの弟子プラトン、プラトンの弟子アリストテレス、この3代にわたる師弟が掘り下げ大いに論じた。

    西洋哲学とは彼らから発している。彼らなしの“西洋哲学”はないしそれを語ることもできない。学生時代をすごしたコロンビア大学で叩きこまれた。その揺るぎない信念は“正義”とその確立だ。

    拙著でも取り上げている「ソクラテス×トラシュマコス論争」に絡めてウクライナ問題を考えたい。

    「ソクラテス×トラシュマコス論争」
    意外にも知らない人たちが多いが、プラトン著『国家』の冒頭に登場するソクラテスとトラシュマコスの激論は海外の知識人のあいだでは有名だ。西洋哲学のルーツとも言える。『国家』は、プラトンの師であるソクラテスを主役にした対話編の大著である。

    プラトンは書のなかで、現代まで続く重要なテーマを投げかけている。

    徳行/欲望と理性/富と幸福/権力と権力/社会契約/偽善/男女同権/私的所有権と公共財産/美質と気概/自律規範/教育/公共的正義/国政の比較考量/形而上哲学(イデア論)/善悪の宗教観(最後の審判)
    政治哲学上の諸問題はあらかた含まれる。

    後世の学者は、ソクラテス・プラトンが発したこれらの問題にそれぞれの解を見つけようとした。それが西洋哲学だと言ってよい。「ソクラテス×トラシュマコス論争」は『国家』の冒頭第1巻に登場する。多岐にわたるこれらの論題を提起する“始まりの始まり”なのだ。

    Other Link: https://toyokeizai.net/list/author/%E4%B8%AD%E6%9D%91+%E8%81%A1%E4%B8%80

  • リベラルアーツ教育の最後に「進化論」を学ぶ意味 コロンビア大学教養講座が伝える「学びの核心」

    中村聡一

    東洋経済オンライン   2021.6

  • 「余暇」の重要性を説いたアリストテレスの慧眼 古代ギリシャの「治乱興亡の歴史」に学ぶ教訓

    中村聡一

    東洋経済オンライン   2021.5

  • 米国エリート教育と第1次世界大戦の深い関係 GAFAがリベラルアーツ教育を重視する理由

    中村聡一

    東洋経済オンライン   2021.5

  • 「外内型M&A」(経済界M&A) 「会社の値段」(東洋経済ベンチャークラブ) 「トラッキングストック・前」(週刊東洋経済) 「トラッキングストック・後」(週刊東洋経済) 「Join forces in the fight against deflation」(共著:ジャパンタイムス) 「Encouraging household to spend more」(共著:ジャパンタイムス) 「South Korea’s aggressive rebound」(共著:ジャパンインク) 「Fスコアで選ぶ有望銘柄」(週刊東洋経済) 「現実論でM&Aを語るべき時代が来た」(民主党政策研究フォーラム「改革者」) 「三角合併は実際にどの程度まで使われるのか」(「力の意思」サンラワールド)

    上述   2000

Other Research Activities 【 display / non-display

  • 実務実績: ・ 日立製作所による世界13カ国のコンピュータ販社再編プロジェクト ・ GEキャピタルによる日本リースの買収プロジェクト ・ GEキャピタルによる丸紅オートリースの買収プロジェクト ・ モルガン・グランフェルの投資信託・投資顧問・信託銀行業務に関わる国内事業組織再編成プロジェクト ・ 北海道拓殖銀行と西ドイツ銀行との資産運用投資顧問分野のプロジェクト ・ EDSによる山一証券の情報子会社の買収案件 ・ 米国ナショナル・ジオグラフィック・ソサエティ(NGS)の日本進出プロジェクト ・ ペプシコーラとUCCの合併検討プロジェクト

    1992 - 2009

  • 実務実績(続):  ・ 三井物産の韓国ビッグディール参画検討のアドバイス ・ 住友林業への投資評価のアドバイス ・ ミスターミニッツ・ジャパンの株主構成再編プロジェクト ・ FMCによる中国合弁事業の検討プロジェクト ・ 三井物産による南アフリカ投資案件 ・ ベトナムの国家高速道路復興プロジェクト ・ 丸紅による独自動車用品小売チェーンの買収案件 ・ EDSによるジャパンシステムの買収プロジェクト ・ ディスコによるイタリアでの買収プロジェクト   ・・・など

    1992 - 2009

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  • 文武両道の実績:日本テニス協会登録プロフェッショナル(継続中) ◇ 全日本テニス順位男子シングルス1位(1986年) ◇ 全日本テニス選手権男子シングルス準優勝(1986年) ◇ 元ユニバーシアード日本代表(1987年) ◇ 元日本テニス協会Jr派遣選手 ◇ (*)ウインブルドン全英選手権1981―82年、全仏82年、全豪82年など ◇ 全日本JrランキングU14、U16、U18の単複(U14単3位除き)に全て1位 ◇ 甲南大学硬式テニス部元コーチ ◇ (*)甲南での最初の数年間―現在は部活からは離れている。 男子チーム 関西学生リーグ一部昇格 、全国王座選抜戦3位(早稲田、慶応に次ぐ) 女子チーム 関西学生リーグ1部昇格

    1980

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