論文 - 遠藤 玉樹
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Real-time monitoring of DNA hybridization kinetics at living cell surfaces 査読あり
Rode A B, Endoh T, Tateishi-Karimata H, Takahashi S, Sugimoto N
Chem. Commun. 49 8444 - 8446 2013年8月
共著
DOI: 10.1039/c3cc42990c
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Stability of RNA quadruplex in open reading frame determines proteolysis of human estrogen receptor α 査読あり
Endoh T, Kawasaki Y, Sugimoto N
Nucleic Acids Res. 41 6222 - 6231 2013年7月
共著
担当区分:筆頭著者
mRNAの翻訳領域中に形成されるRNA四重鎖構造が要因となるヒトエストロゲンレセプターアルファのタンパク質切断
要旨:翻訳反応は、塩基配列に保存された情報を、タンパク質という機能性分子に変換する重要な過程である。翻訳反応過程では、リボソームがmRNA上を5′側から3′側へ移動しながらアミノ酸を連結していく。この過程は、単調に進むのではなく、様々な要因により速度が遅くなったり、一時的に停滞したりする。近年では、翻訳伸長反応の速度変化が、翻訳後タンパク質の構造形成に影響を及ぼしていることが示唆されつつある。我々は最近、翻訳領域中に形成されるRNA四重鎖構造が、翻訳伸長反応の進行を妨げることをin vitroとin cellにて見出した。RNA四重鎖構造については、mRNAの非翻訳領域に存在するものを中心に研究が進められており、四重鎖構造による翻訳伸長反応の抑制が、細胞内でどのような生理的役割を果たしているのかは定かではない。
本研究では、翻訳領域中に四重鎖構造を形成しうる遺伝子の候補としてヒトエストロゲンレセプターアルファ(ERα)に着目し、四重鎖構造がERαの発現挙動に与える影響を解析した。ERαはマルチドメインから形成されるタンパク質であり、四重鎖構造を形成しうる配列は、DNA結合ドメインとリガンド結合ドメインをコードする領域の中間に存在する。そのため、四重鎖構造による翻訳伸長反応の抑制が、両ドメインの構造形成に影響する可能性が考えられる。まず、ERαの翻訳領域に存在するグアニンに富んだ配列を合成し、in vitroで構造を評価した。その結果、パラレル型の四重鎖構造を形成することが確認された。そこで、翻訳されるアミノ酸配列を同じにして、様々な熱安定性を有する変異配列を作製した。これらの変異配列を有するERαの遺伝子を細胞に導入し、その発現をウェスタンブロッティングで評価した。その結果、形成される四重鎖構造の安定性に応じて、完全長のERαの翻訳産物の他に、分子量の小さいERαが産出されていることが明らかとなった。N末端もしくはC末端に蛍光タンパク質を融合したERαを発現させて評価したところ、分子量の小さい翻訳産物は、完全長のERαが産出されてから分解を受けて生じていることが明らかとなった。アミノ酸配列は全く同じであるにも関わらず、四重鎖構造の熱安定性に応じて分解産物が生じていたことから、翻訳伸長反応の抑制を介してERαの構造と分解挙動に影響したと考えらえる。このような結果を踏まえ、mRNAは、単にタンパク質のアミノ酸配列を規定するだけではなく、タンパク質の構造形成から分解に至るまでに関与する高次なメッセージを有している可能性が考えられる。DOI: 10.1093/nar/gkt286
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Efficacy of base-modification on target binding of small molecule DNA aptamers 査読あり
Imaizumi Y., Kasahara Y., Kitadume S., Ozaki H., Endoh T., Kuwahara M. and N. Sugimoto
J. Am. Chem. Soc. 135 9412 - 9419 2013年6月
共著
低分子化合物に結合するDNAアプタマーにおける塩基修飾の有効性
要旨:DNAやRNAの一部を人工的な化学構造で改変した修飾核酸は、天然の核酸分子よりも優れた機能性を発揮することができる。特に、特定のタンパク質に強く結合するアプタマーは、核酸医薬などへの応用が見込まれる。これまでに、天然核酸ではアプタマーを取得することが困難なタンパク質に対し、塩基部位にアミノ酸側鎖を修飾することで高親和性を有する修飾核酸アプタマーを取得できることが示されている。一方で、タンパク質と比較して相互作用に寄与できる化学構造が少ない低分子化合物の場合、塩基部位への化学修飾が高親和性を有するアプタマーの取得に有効であるかどうかは実証されていない。
本研究では、天然核酸と塩基修飾核酸から同一の標的分子に対するアプタマーを取得し、塩基修飾による低分子化合物への結合親和性の向上を実証することを試みた。アプタマーを取得する標的分子として、抗がん剤であるカンプトテシン(CPT)誘導体を選択した。塩基修飾を有するDNA(修飾DNAライブラリー)は、チミジンの5 位にN6-アミノエチルアデニンを修飾したヌクレオチドを合成し、DNAポリメラーゼによる伸長反応中に取り込ませることで作製した。修飾DNA ライブラリーおよび天然型DNA ライブラリーを用いて、CPT誘導体に特異的に結合する核酸アプタマーの取得をそれぞれ行った。そして、得られた修飾DNA アプタマー(CMA)および天然型DNA アプタマー(CDA)のCPTに対する結合特性を比較検討した。表面プラズモン共鳴測定装置(SPR)を用いて結合親和性を評価した結果、CDAのCPTに対する解離定数が1.1 μMであったのに対し、CMAは0.039 μMと30倍近くCPTに対する結合親和性が高くなっていた。また、CMAが有するCPTに対する結合親和性は、CPT以外の低分子化合物に対する天然型DNA/RNAアプタマーと比較しても高く、アプタマーに対する塩基修飾の有効性を示すことができた。さらに、塩基修飾による結合親和性の増大は解離速度定数が0.00033 s-1という非常に小さい値を示すことが原因であり、CDAと比較して270倍遅い解離速度を示すことが明らかとなった。このことから、本研究で取得されたCPTに対する修飾塩基アプタマーを利用し、がん細胞への効率的なドラッグデリバリーなどへの応用が見込まれる。DOI: 10.1021/ja4012222
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Translational halt during elongation caused by G-quadruplex formed by mRNA 招待あり 査読あり
Endoh T, Kawasaki Y, Sugimoto N
Methods 64 73 - 78 2013年6月
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Suppression of gene expression by G-quadruplexes in open reading frames depends on g-quadruplex stability 査読あり
Endoh T, Kawasaki Y, Sugimoto N
Angew. Chem. Int. Ed. 52 5522 - 5526 2013年5月
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Selection of RNAs for constructing “Lighting-UP” biomolecular switches in response to specific small molecules 査読あり
Endoh T, Sugimoto N
PLoS ONE 8 e60222 2013年3月
共著
担当区分:筆頭著者
生体内では、様々な分子が、分子間のアロステリックな相互作用を介して機能発現を調節している。例えば、リボスイッチと呼ばれる機能性RNAは、特定の代謝産物に応答して遺伝子の発現を調節する。特に、翻訳反応の調節に関わるリボスイッチの場合、mRNA上に存在するリボスイッチが構造変化することで、リボソームとmRNAとの相互作用がアロステリックに制御されている。このようなメカニズムは、RNAと特定分子との結合に伴うRNAの構造変化が、タンパク質機能の調節に有用であることを示している。
本研究では、特定の低分子化合物を検出するために、RNA‒タンパク質間のアロステリック相互作用を利用した発光バイオセンサーを構築した。我々はこれまでに、RNAの検出を目的とした遺伝子改変型のルシフェラーゼを構築しており、特定のRNAとの結合を発光シグナルで検出することに成功している。そこで、低分子化合物との結合によるRNA構造変化を起因とし、改変型ルシフェラーゼと結合できるようになるRNAを構築することにした。喘息薬の一種であるテオフィリン、および抗生物質の一種であるテトラサイクリンを検出対象とし、これらの分子に特異的に結合することが知られるRNAアプタマーを利用した。それぞれのRNAアプタマーと、改変型ルシフェラーゼとの結合に必要なTAR-RNAとをランダムな配列を介して連結したRNAライブラリーを設計した。そして、テオフィリン、テトラサイクリンに応答して、TAR-RNAの結合標的であるTatペプチドと相互作用するRNAをセレクションにより獲得した。6サイクルのセレクション過程を経たのちに得られたRNAは、それぞれの標的分子に応答してTatペプチドとの結合定数が10倍以上上昇した。そこで、生体外翻訳系を用いて発現させた改変型ルシフェラーゼと、セレクションにより得られたRNAとを混合し、発光シグナルによる標的分子の検出を試みた。その結果、標的分子の濃度に依存した発光シグナルの上昇が確認でき、テオフィリン10 μM、テトラサイクリン2 μMでも有意に検出可能であった。このことは、RNAによる分子認識と、それに引き続くタンパク質とのアロステリックな相互作用を介して、ルシフェラーゼの発光反応触媒機能を調節できたことを示している。RNAとタンパク質はどちらも細胞内で発現させることが可能であり、細胞内で機能する発光バイオセンサーへの応用が期待される。 -
Dehydration from conserved stem regions is fundamental for ligand-dependent conformational transition of the adenine-specific riboswitch 招待あり 査読あり
Kumar V, Endoh T, Murakami K, Sugimoto N
Chem. Commun. 48 9693 - 9695 2012年9月
共著
DOI: 10.1039/C2CC34506D
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Synchronized translation for detection of temporal stalling of ribosome during single-turnover translation 査読あり
Endoh T, Kawasaki Y, Sugimoto N
Anal. Chem. 84 857 - 861 2012年1月
共著
担当区分:筆頭著者
翻訳伸長反応は一律に進むのではなく、様々な因子の影響を受け、その速度が大きく変化する。特に、mRNA中に存在するレアコドンや安定な二次構造は、翻訳伸長反応速度を低減させることが知られている。近年、翻訳伸長反応の一時的な停滞や速度変化が、タンパク質の構造形成過程に大きな影響をもたらすことが明らかになりつつある。つまりmRNAは、ただ単にアミノ酸配列を規定するだけではなく、翻訳伸長反応速度への影響を介して、タンパク質の機能発現までも調節している可能性がある。そのため、mRNA上のどの位置で、どの程度、翻訳伸長反応が停滞したり速度変化を示したりするのかを正確に解析することが重要である。しかしながら、翻訳反応過程では、律速となる反応が翻訳開始過程にあることが知られており、翻訳伸長反応のみに焦点を当てた解析は、既存の解析手法では困難である。
本研究では、翻訳伸長反応のみに焦点を当て、反応過程の継時的な解析を可能にするSynchronized Translation(同調翻訳)という解析手法を構築した。一段階目の反応として、再構成型の無細胞翻訳反応系を利用し、翻訳反応溶液から特定のアミノアシルtRNA合成酵素を取り除いておくことで、翻訳を開始したリボソームを特定のコドンの位置で強制的に停止させた。また、この反応段階において非天然蛍光アミノ酸を翻訳産物に導入し、翻訳産物を蛍光シグナルで解析できるようにした。二段階目の反応として、翻訳反応に必要な全ての因子を含む反応溶液を加え、翻訳伸長反応を一段階目で停止させてある位置から再開させた。これにより、律速段階となる翻訳開始過程を省き、1分間というこれまでにはない短い時間軸における経時的な翻訳伸長反応の解析を可能にした。結果として、46アミノ酸を伸長する間に3カ所で翻訳伸長反応が一時的に停滞し、そのうちの2カ所はレアコドンが原因となっていることが明らかとなった。DOI: 10.1021/ac202712g
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Photosensitizing carrier proteins for photoinducible RNA interference 査読あり
Matsushita-Ishiodori Y, Kuwabara R, Sakakoshi H, Endoh T, Ohtsuki T
Bioconjug. Chem. 22 2222 - 2226 2011年10月
共著
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Direct detection of RNAs in living cells using peptide-inserted Renilla luciferase 査読あり
Andou T, Endoh T, Mie M, Kobatake E.
Analyst 136 2446 - 2449 2011年5月
共著
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Gene regulation system with an artificial RNA switch operating in human cells 査読あり
Endoh T, Sugimoto N.
Chembiochem. 2011 Apr 29. [Epub ahead of print] 2011年4月
共著
担当区分:筆頭著者
近年、リボスイッチと呼ばれる機能性RNAを利用した特徴的な遺伝子発現制御機構の存在が明らかになってきている。リボスイッチは主に、mRNAの5’非翻訳領域中に存在しており、標的となる代謝産物の結合に伴うRNAの構造変化を介して遺伝子発現を調節している。これまで、原核生物では多種類のリボスイッチが確認されているものの、真核生物ではごく少数の生物種に限られており、特にヒトを中心とした高等生物では報告例がない。一方で、リボスイッチに類似した機構による人工的な遺伝子発現制御システム(人工リボスイッチ)がいくつか開発されているものの、これまでのところ転写後反応の制御に機能する人工リボスイッチに関する報告のみであった。
本研究では、特異的なRNA配列(TAR-RNA)に結合して遺伝子の転写を活性化する免疫不全ウイルス由来のトランス活性化因子(Tat)を利用し、ヒト細胞内での遺伝子発現を転写段階で制御できる人工リボスイッチシステムの構築を行った。TAR-RNAのループ部位に対して、低分子化合物(テオフィリン)に結合するRNAアプタマーを挿入した人工RNAを設計し、これをもとにレポーターベクターを構築した。そして、作製したベクターを、Tatを発現するベクターと共にHeLa細胞に導入し、テオフィリン存在下での遺伝子発現を評価した。その結果、0 – 1 mMの範囲において、培地中に添加したテオフィリン濃度に依存して遺伝子発現が抑制されることが示された。細胞外の実験結果から、テオフィリン存在下において設計したRNAとTatとの結合定数が減少することが示されているため、TAR-RNAに挿入したアプタマーとテオフィリンとの結合がTatの結合および転写の活性化を阻害していると考えられる。 -
Development of an RNA detection system using bioluminescence resonance energy transfer 査読あり
Andou T, Endoh T, Mie M, Kobatake E
Sensor Actuat. B Chem. 152 ( 2 ) 277 - 284 2011年3月
共著
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Evaluation of small ligand-protein interactions by using T7 RNA polymerase with DNA-modified ligand 査読あり
Mie M, Sugita R, Endoh T, Kobatake E.
Anal. Biochem. 405 ( 1 ) 109 - 113 2010年6月
共著
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Cellular siRNA delivery using TatU1A and photo-induced RNA interference 招待あり
Endoh T, Ohtsuki T
Methods Mol. Biol. 623 271 - 281 2010年4月
共著
担当区分:筆頭著者
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Improvement of CPP-RBD for siRNA Delivery
Kuwabara Rina, Endoh Tamaki, Sisido Masahiko, Ohtsuki Takashi
ANIMAL CELL TECHNOLOGY: BASICS & APPLIED ASPECTS 16 191 - 196 2010年
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Detection of bioactive small molecules by fluorescent resonance energy transfer (FRET) in RNA-protein conjugates 査読あり
Endoh T, Shintani R, Mie M, Kobatake E, Ohtsuki T, Sisido M.
Bioconjug. Chem. 20 2242 - 2246 2009年12月
共著
担当区分:筆頭著者
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PNA Arrays for miRNA Detection 査読あり
Endoh T, Kitamatsu M, Sisido M, Ohtsuki T
Chem. Let. 38 438 - 439 2009年5月
共著
担当区分:筆頭著者
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Carrier PNA for shRNA delivery into cells 査読あり
Kitamatsu M, Kubo T, Matsuzaki R, Endoh T, Ohtsuki T, Sisido M
Bioorg. Med. Chem. Lett. 19 3410 - 3413 2009年5月
共著
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Spatial regulation of specific gene expression through photoactivation of RNAi 査読あり
Endoh T, Sisido M, Ohtsuki T
J. Control. Release 137 241 - 245 2009年4月
共著
担当区分:筆頭著者
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APPLICATIONS OF PEPTIDE NUCLEIC ACIDS FOR RNA PURIFICATION, RNA DETECTION, AND INTRACELLULAR RNA DELIVERY
Takashi Ohtsuki, Tamaki Endoh, Mizuki Kitamatsu, Masahiko Sisido
IFPT'6: PROGRESS ON POST-GENOME TECHNOLOGIES, PROCEEDINGS 22 - 23 2009年
共著
出版者・発行元:SOUTHEAST UNIV PRESS
Peptide nucleic acids (PNAs) are nucleic acid analogs with an achiral polyamide backbone. Since the PNA-RNA hybrids are thermally more stable than the corresponding DNA-RNA or RNA-RNA hybrids, PNAs can be tools for catching and detecting RNAs. In this study, we developed PNA-based methods for RNA isolation, RNA detection, and intracellular RNA delivery.