論文 - 田中 誠人
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一部請求における相殺の抗弁の取り扱い―判例理論を中心とした相殺の抗弁の帰趨―
田中 誠人
甲南法学 54 ( 3・4 ) 157 - 185 2014年3月
単著
本稿は、従来個別に議論が行われてきた一部請求の可否・一部請求訴訟における相殺の抗弁の客体・相殺が認められた場合の既判力の範囲につき、判例理論を中心として、これら議論を総合した場合の問題点を指摘し、総括的な視点から検討をおこなったものである。全29頁
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訴訟における相殺の抗弁の取り扱い―法的性質論からのアプローチ―
田中誠人
甲南法学 53 ( 3 ) 331 - 369 2013年1月
単著
本稿は、従来から議論が行われている相殺の抗弁と重複訴訟の禁止原則との関わりにおいて、従来の議論を離れ、まずはそもそも訴訟上において相殺の抗弁がなされた場合に、その法的性質をどのように解するかとの議論に基づき、相殺の抗弁については重複訴訟禁止原則の範囲外であるとしながら実体法上ないし訴訟法上の信義則に基づき、当事者に選択を迫りつつ柔軟に取り扱うべきとの視点から検討をおこなったものである。全39頁
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訴訟上の相殺の抗弁と重複訴訟の禁止―最高裁平成18年4月14日判決を素材として―
田中誠人
「民事司法の法理と政策(上)」小島武司先生古稀祝賀記念論文集 商事法務 2008年8月
単著
本稿は、その問題意識を「相殺の抗弁に関する一考察―相殺の抗弁と重複訴訟の禁止―」と同一にする。
別訴において訴訟物となる債権を自働債権とする相殺の抗弁については、多くの判例があり、学説の対立も明らかであるのに対し、同一手続における同様の問題につき、判例が存在しなかったところ、同時履行の関係にある対立債権について、反訴の後に訴訟上の相殺の抗弁を提出した場合の履行遅滞の始期を主たる争点とする事案において、前提として同一手続・訴え先行における相殺の抗弁と重複訴訟の禁止の問題につき、最高裁が平成18年4月14日判決において始めて判断を示したことから、この判例にも焦点を当てつつ、相殺の抗弁と重複訴訟の禁止とのかかわりにつき、再検討をおこなったものである。全30頁 -
一部請求論考察
田中誠人
三重大学法経論叢 23 ( 2 ) 2006年3月
単著
本稿は、従来から議論が行われている、一部請求の場合の残部請求の可否につき、検討を行う論文である。
本稿では、一部請求の場面で肯定説の採る、広範なテスト訴訟の必要性につき疑問を投げかけつつ、訴訟上の禁反言ないし失権効を理由に、原則として一部請求の場面での残部請求を否定し、不法行為に基づく損害賠償請求などにおいて、損害額の設定が困難であることを理由として請求額が定まらない場合に限り、一部(テスト訴訟)であることを明示のうえで残部請求を肯定する余地を残している。全23頁 -
相殺の抗弁に関する一考察―相殺の抗弁と重複訴訟の禁止―
田中誠人
三重大学法経論叢 22 ( 2 ) 2005年3月
単著
本稿は、相殺の抗弁に関する問題のうち、従来から問題とされている、相殺の抗弁と重複訴訟の禁止のかかわりについて、検討するものである。
相殺の抗弁が判決理由中において判断された場合、既判力を生ずるものと規定され(114条2項)これにより、重複訴訟の禁止がその射程とする、判決の矛盾・抵触のおそれが生ずることとなる。この点に着目し、別訴において訴訟物となる債権を自動債権とする相殺の抗弁につき消極的な立場を採るのが最高裁の判断であり(平成3年判決)、以後この問題については、当該判決を踏襲して結論が導かれる。本稿では、この判例理論における統一的処理に疑問を投げかけ、従来、学説において検討されてきた訴え先行の場合と抗弁先行の場合を個別に検討し、訴え先行の場合に相手方が提訴した別訴において、前訴で訴訟物となっている債権を自動債権とする相殺の抗弁を適法なものとする見解を採っている。全34頁 -
最先順位の抵当権者に対抗することができる賃借権により競売不動産を占有する者が当該不動産に設定された抵当権の債務者である場合における引渡命令
田中誠人
法学新報(中央大学) 110 ( 7-8 ) 2003年11月
単著
買受人に対抗することができる占有権原を有している占有者が、当該不動産において抵当債務者ともなっており、当該債務の債務不履行により抵当権が実行された場合の引渡命令発令の可否については、従来から争いがあり、多くの先例や学説においても議論されている。
本件事案はさらに、占有者が後順位の抵当債務者であり、しかも自己の抵当債務について債務不履行がないという、従来の議論の射程の範囲を超えた事案について、判断を示したものとして評価することができる。
本稿は、従来から議論のあった、実行抵当権の抵当債務者兼賃借人に対しての引渡命令発令の可否についての争いについて触れ、その後に本件事案の具体的論点について、それぞれ検討を加えたものである。判例のとる競売開始決定説を支持しつつ、今後の展望として、物件明細書に何らかの法的拘束力を設けるべきであるとの提言をおこなっている。全24頁。 -
相殺の再抗弁の可否
田中誠人
中央大学大学院研究年報 第31号法学研究科篇 ( 31 ) 2002年2月
単著
相殺の抗弁は、その法的性質自体に未だに争いがあり、具体的には、①その法的性質について、②既判力の客観的範囲について、③重複訴訟との関連について、④一部請求及び不利益変更禁止の原則に関連して、⑤相殺の再抗弁について、長く、ドイツにおいても、また我が国においても問題とされてきたにもかかわらず、いまだ解決を見ていない。
本稿は、このような相殺の抗弁に関する問題のうち、従来から問題とされていたにもかかわらず具体的な事案に欠け、ドイツにおいても、また我が国においても議論がさほど激しく交わされてはこなかった相殺の再抗弁の可否について検討するものである。
訴訟上で行使されることで実体法の射程から外れた、いわば訴訟法独自の問題点につき、実体法上の効果から切り離して、裁判所の判断に委ねるべきであるとする見地から、再抗弁肯定説を採るものである。全13頁