在外研究等報告書 - 中町 信孝
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ベルギーおよびエジプトでの研究打ち合わせ・シンポジウム参加
2019年8月詳細を見る
8月17日に日本を発ち、翌日ベルギー・ブリュッセルに到着。19日にはアントワープ大学のMalika Dekkiche氏と面会、21日にはルーヴェン・カトリック大学のChing Lin Pang氏と面談した。8月22日よりエジプトに移り、24日にはカイロ・アメリカ大学で、26日にはアレクサンドリア図書館でワークショップに参加し、学会発表と司会の役を担った。その他、ブリュッセル、ゲント、ルーヴェン、カイロ、アレクサンドリア市内の巡検を行った。 前半のベルギーでの活動は、2年後の在外研究に向けての準備のために行ったものであり、受け入れ機関の候補として考えているいくつかの研究機関の関係者に面会することや、居住地の候補としている都市の巡検を行うことで、具体的な研究・居住の計画を立てることが可能となった。 後半のエジプトでの活動は、分担者として参加する科研費による研究活動の一環であり、西アジア都市の比較研究に関わるものであった。私自身、ワークショップの発表者の一人として1つの事例を提供するとともに、24日の午後のセッションでは司会を務め、日本とエジプトの研究者の間での意見交換を先導することができた。 なお、ブリュッセル、ゲント、ルーヴェン、カイロ、アレクサンドリアにおいては歴史的遺跡や博物館においての巡検・調査を行うことができたが、これは今後の教育における有効なリソースとなるだろう。
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ヘント大学での研究会参加
2018年7月詳細を見る
世界中のマムルーク朝研究者を集めて毎年開催されている国際会議「マムルーク研究学会」も、今年で5度目の開催となる。私はかつて第3回目の会議に自由課題パネルの3人の発表者の1人として参加したことがあったが、今回は「文献学」という共通テーマのもとに単独での研究発表でエントリーした。 会議には開催国ベルギーの他、ドイツ、フランス、イスラエル、アメリカの大学を中心に、著名なマムルーク朝研究者が一堂に会した。実際の発表における質疑応答もさることながら、ランチタイムやコーヒーブレークの時間などを通してもさかんに学術的議論が交わされる会議であった。 なお、同国際会議は来年度、早稲田大学での開催が決まっており、私も実行委員として運営に加わることとなっている。本会議3日目には同大学の大稔哲也教授、五十嵐大介准教授および、ヘント大学のヨー・ヴァン・ステーンベルヘン教授、リエージュ大学のフレデリック・ボダン教授、シカゴ大学図書館のマルリス・サーリフ氏とともに来年度会議に関するランチミーティングを行った。 3日間に及ぶ研究会議では、文献学を中心に政治史・文化史等、幅広いテーマが扱われ、マムルーク朝研究の奥行きの広さをうかがわせるに十分であった。私自身の発表は幸いにも多くの研究者から好意的に受け入れられ、有意義なコメントを頂戴することもできた。後に述べる論文集の一章として文章化する際にはそれらの知見を反映させてより完成度の高い論文としてまとめたい。 また、来年度に東京で行われる第6回大会に向けての方向性も、今回のミーティングをへて定まってきた。次回は発表のみならず運営面でも同会議に積極的に関わることにより、より充実した学術交流を実現させたい。 開催地ヘントは神聖ローマ皇帝カール5世の出身地としても知られ、古来ヨーロッパ史の中心的都市として繁栄を誇ってきた都市でもある。会議の合間に城塞・修道院・運河など往時を偲ばせる遺跡を巡検することができたことは、今後の大学での講義で活かせることとなるだろう。
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シカゴ大学での研究会参加
2016年6月詳細を見る
米国のシカゴ大学、ベルギーのリエージュ大学、イタリアのカ・フォスカリ大学の3つの拠点が中心となって、世界中のマムルーク朝研究者を集めて毎年開催している国際会議、マムルーク研究学会も、今年で3度目の開催となる。従来も日本の研究者も単独で参加することはあったが、今回ははじめて、日本の研究者が自由課題パネルを立てることとなり、私はその3人の発表者の1人として参加した。 会議には米国東部、中西部の大学を中心に、著名なマムルーク朝研究者が一堂に会し、またドイツ、ベルギー、エジプト、ロシア、イスラエルなど、さまざまな国の研究者も集った。実際のパネルにおける質疑応答もさることながら、コーヒーブレークの時間などを通してもさかんに学術的議論が交わされる会議であった。 なお、会議はシカゴ大学リーゲンスタイン図書館の中で行われ、主催者から参加者に対しては、同図書館におけるウェブサービス等の権利が与えられたため、会議前後の時間を使って文献調査を行うこともできた。
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エジプトでの文献調査
2015年12月-2016年1月詳細を見る
このたびの海外出張では、マムルーク朝社会史研究の一次史料となるワクフ文書の閲覧のために、国立文書館での調査を予定していた。しかし、3年前に利用申請を行ったのちに、2013年6月の政変があったために、速やかに利用証を発行・入手することができず、その時の申請はすでに無効となっていた。文書館の利用申請は国外から行うことが非常に困難なため、今回は再び必要書類を集めて提出し、3ヶ月後以降に利用証の発行手続きを行った。 一方、写本等のマイクロフィルムを数多く収蔵する国立図書館において、中世アラビア語写本のマイクロフィルムを閲覧した。その他、国立図書館の出版部門をはじめ、エジプトの出版物の最新情報をつぶさに観察した。 その他、現地人インフォーマント、日本大使館や日本貿易振興機構の駐在調査員、日本のマスコミ各社の駐在員等との面会を行い、最新の現地情報を得た。
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シカゴ大学での文献調査
2014年8月詳細を見る
このたびのシカゴ大学における資料調査は、2012年9月〜2013年2月の半年間の在外研究での活動を補足する内容を持つ。当時の調査で見残した資料や、その後に出版された研究などを中心に、文献調査を行った。夏季休暇期間のため、旧知の研究者・図書館司書と面会する機会は持てなかったものの、図書館自体は常に開館しており、無料で取得できる「ビジター・パス」を発行してもらうことで、文献調査は支障なく行えた。 閲覧した文献としては ・ イブン・イヤースの年代記(索引付き校訂本) ・ Ahmad Abd ar-Raziqによるマムルーク朝女性史研究 ・ van Berchemらが19世紀に編集したアラビア語碑文目録などの稀覯本 ・ その他数点のアラビア語、トルコ語書籍 ・ ボン大学、Mamluk Studiesシリーズの研究書 がある。 なお、調査の空き時間においてはシカゴ市北部にも足を伸ばし、ポーランド人街(アメリカ・ポーランド博物館含む)、スウェーデン人街、および、中東系移民コミュニティーを見学した。
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リエージュ大学での学会参加
2013年10月詳細を見る
リエージュ大学のフレデリック・ボダン教授は、マムルーク朝史の研究者であり、現在は同大学が所蔵する歴史家マクリーズィーの自筆本に関する緻密な分析をおこなっている。そのボダン教授が中心となって開催された今回の学会では、世界各国から写本を用いた歴史研究に携わる研究者が集まり、原著者自らの筆跡や稿本をいかにして歴史研究に役立てるかという観点から、さまざまな切り口での研究発表を行い、意見の交換を行った。 その中で私は、従来からおこなってきたマムルーク朝の歴史家アイニーの自筆本であるフランス写本を対象とし、その特異な成り立ちや歴史文献学上の重要性についてのプレゼンテーションを行った。 この研究会ではベルギー、ドイツ、フランス、イギリス、イスラエル、アメリカそして日本から、総勢20名ほどの研究者が集まり知識を披露し合った。著者自筆の稿本を用いた研究という、非常に限定された条件のテーマでありながら、参加者はコディコロジー、パレオグラフィー、文献学、文学研究、文化史と、さまざまなバックグラウンドからの意見を出し合い、すべての研究に共通する、自筆本利用の効用と問題点についての総合的な理解を深めるという1つの目的を共有しており、実に知的刺激に満ちた研究会となった。 特にアラビア語文献コディコロジーの大家であるアダム・ガチェック教授の提言により、中世期のアラブ著名作家による筆跡のデータベース作成が、今後の研究会の課題として掲げられたことは、このジャンルに隣接する領域のすべての研究者にとって、有益なこととなるであろうし、私もその目的のために研究協力を続けていくことになるであろう。 また、2日間にわたった研究会後のエクスカーションとして、リエージュ大学付属図書館が収蔵するアラビア語稿本の見学会があったが、そこではボダン教授の研究対象である歴史家マクリーズィーの自筆による雑記帳など、きわめて価値の高い史料がいくつも紹介され、参加者にはそれらを実見する機会が与えられた。図書館の規模はそれほど大きくないものの、研究者と図書館司書とが協力し合い、アラビア語手書き資料の収集と整理、研究を行っている様がうかがえ、そちらも非常に刺激を受けた。
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イギリスでの文献調査
2013年8月詳細を見る
ロンドンにおいては大英図書館のアジア・アフリカ室において、バドルッディーン・アイニーの著した年代記を中心とする手稿本の実見調査、および同室の所有する手稿本のカタログ調査を行った。オクスフォードにおいてはボドリアン図書館等を訪問し、閲覧室の内部まで見学した。
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ガズィアンテプ大学でのシンポジウム参加
2013年5月詳細を見る
マムルーク朝時代エジプトで活躍した歴史家アイニーは、生まれ故郷は現在のトルコ共和国にあるガジアンテプであり、今回のシンポジウムはそのような縁からガジアンテプの国立大学、ガジアンテプ大学神学部の主催で開催された。シンポジウムは2日間にわたる発表・討論会と、その後1日の市内エクスカーションからなる。私が行った発表「アイニーに帰せられた4年代記」(英語)は、2日目の第6セッション「アラビア語および歴史学におけるアイニー」に含まれる。3日目のエクスカーションは、市中心部にある歴史博物館や、セレウコス朝時代の出土品を展示するゼウグマ・モザイク博物館を中心に、ガジアンテプの旧市街を巡るものであった。また、その翌日には同地出身のFerhat Gokce博士の案内で、市街地のモスクや城塞周辺をつぶさに見て回ることができた。 25名の発表者のうち、3名がアラビア語、私を含む2名が英語で発表を行い、残る20名はトルコ語という、トルコ色の強い「国際」シンポジウムであった。また、神学部の主催と言うことで、発表の大半はハディース学等イスラーム学関連のものであり、歴史学に関する発表は少なかった。しかし、トルコ人研究者たちが、遠来の客である私を非常に歓迎してくれた点は感謝に堪えない。発表には一人ずつ討論者が付く形式であり、討論者はあらかじめ発表者のフルペーパーに目を通して討論に望んでいたため、発表後のコメントでは的確な意見をもらえたことは収穫であった。ただし、自由討論の時間が設けられていなかったのは残念である。ともかく、本シンポジウム唯一の日本人参加者として、存在感を示すことだけは十分にできたはずであり、今後の学会交流に結びつけていきたい。 また、今までアイニーという歴史家のライフストーリーについて研究を重ねてきたが、その出身地であるガジアンテプという町自体にはあまり関心を払ってこなかった。今回の短期滞在ではガジアンテプ大スタッフおよびGokce博士の協力を得て、同市に残る歴史的遺構の数々を見ることで、この町が持つ歴史的な重要性に気づかされた。同市は現在「シルクロードの都」とのキャッチフレーズで再開発が行われている最中であり、実際にヘレニズム時代から現代に至るまで、各時代の経済・文化中心としての痕跡が町のあちこちに刻まれている。特にトルコ人にとっては「食いだおれの町」としても名高いようであった。中世史研究者としての観点から、今後この町をフィールドとした考古学・地誌研究のアプローチも十分に可能であろうと思われた。
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シカゴ大学での在外研究
2012年8月-2013年3月詳細を見る
シカゴ大学においてはRegenstein Libraryの図書館員マーリス・サーレフ氏の協力を得て、文献調査と文書および写本史料の閲覧を行った。同図書館は英語のみならずアラビア語による研究文献が豊富に所蔵されており、今まで参照できなかったアラブ中世史の重要な研究を閲覧することができた。また文書および写本についてはマムルーク朝時代関連史料を中心として多くのものを閲覧・複写することができた。 それ以外にも、受入学部や同大学中東研究センターのウッズ教授、ドナー教授、その他若手研究者らと交流し、定期的に開催されるワークショップに参加して北米での中東研究の動向をつぶさに観察することができた。11月にデンバーで開催された北米中東学会の年次大会で、北米および中東現地の研究者による口頭発表に参加したことも、大きな収穫であった。 この間、シカゴ大学国際部が主催する英語クラスにおいて、アカデミックライティングおよびエディティングの少人数・個人レッスンを受け、これまで和文にて発表した自身の研究論文を英文にて書き直す作業を進めた。 1〜2月には、カイロで開催された国際ブックフェアを訪れ、現地の出版・研究動向を観察するとともに、歴史研究上の基本史料を購入した。
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トルコおよびチュニジアでの文献調査
2009年8月-2009年9月詳細を見る
科研費 トルコ・チュニジア両国において、写本を中心とした研究資料の調査を行った。トルコでは、研究機関が出版する機関誌を通じて重要写本の存在を確認したが、時間の都合で実見することはできなかった。チュニジアでは国立図書館の写本部門において数点の写本を閲覧し、複写を申請した。
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マレーシアでの国際会議参加
2008年11月詳細を見る
イスラーム地域研究国際会議、マラヤ大学