Papers - NISHIO Junji
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方言研究支援プロジェクトを振り返る Reviewed
二階堂整, 田中ゆかり, 西尾純二, 灰谷謙二, 半沢康
方言の研究 ( 7 ) 29 - 35 2021.7
Publisher:日本方言研究会・ひつじ書房
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和歌山県田辺市龍神方言
西尾 純二
全国方言文法辞典資料集(5)活用体系(4) 59 - 72 2019.3
動詞等の活用における日本語諸方言のバリエーションと,それを記述するための枠組みを提示することを目的として,全国の要地方言における活用体系の記述が,小西いずみ,日高水穂らを中心に行われている。本稿は,その一環として,和歌山県田辺市龍神方言の活用を記述したものである。本州ではこの地のみに見られるとされる,二段活用の残存状況をはじめ,形容詞,形容名詞,名詞述語の活用についても現地調査をもとに記述した。
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A Description of Cultural Attitudes and Language Ecpression Relating to Request Discourse Reviewed
NISHIO Junji
The Japanese Journal of Language in Society 21 ( 1 ) 80 - 95 2018.9
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Sociolinguistics Invited
NISHIO Junji
Studies in the Japanese Language 14 ( 3 ) 83 - 90 2018.8
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Seiichi Nakai, The Formation of Urban Language and Regional Characteristics in it Invited
NISHIO Junji
The Journal of KOKUGAKUIN University 114 ( 3 ) 46 - 50 2013.3
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大阪・奈良・三重近畿横断グロットグラムに見る待遇表現の諸特徴
西尾 純二
岸江信介、西尾純二、村田真実、辰野由佳(編) 『近畿地方中部域の言語動態-大阪・奈良・三重近畿横断GG調査から-』徳島大学総合科学部日本語学研究室 65 - 79 2012.3
松阪市-大阪市間のグロットグラム調査から,待遇表現について各形式の分布状況を把握し,テクレル形式とヤハル・ヤル形式の成立について検証を行った。三重県と奈良県の境界にある方言敬語の接触地帯では,待遇表現として機能するテクレル形式が分布していることや,ヤハル形式の成立には,待遇場面にアスペクト性を見いだして事態把握する慣習が関わるという説を提出した。また,待遇表現形式のヤルの成立については,ヤリハルがヤハル,ヤール,ヤルと変化したという「音変化仮説」と,事態をアスペクト(進行相)的に把握・表現する慣習が,アスペクト形式だったヤルとハルとを結び付けた結果,ヤハル形式がアスペクト形式なのか,待遇表現形式なのか曖昧な段階を経て,待遇表現形式としてヤハルが定着し,その後ヤルに変化したとする「事態把握法仮説」とを立て,当該フィールドにおける待遇表現形式の分布状況について確認した結果,後者の仮説が適用されることを主張した。
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OKI Hiroko, KANG Suk-Woo, ZHAO Hua-Min, NISHIO Junji
The Japanese Journal of Language in Society 13 ( 2 ) 138 - 143 2011
Publisher:The Japanese Association of Sociolinguistic Sciences
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岡崎市における敬語運用の多様性
西尾 純二
西尾純二・辻加代子・久木田恵(著)『敬語と敬語意識―愛知県岡崎市における第三次調査― 研究成果報告書 第4分冊 記述調査編』 科研費報告書(課題番号:19202014,代表:杉戸清樹) 2010.3
岡崎市生え抜きの60代から70代の老年層を対象に,敬語運用の運用と体系について記述した。現在の岡崎市高年層では,すでに方言敬語を使用しないとする話者がいる。一方で,方言敬語を使用する話者には,尊敬語として待遇価の高い順に「オイキタカ」「イカシタカ」「イッタカン」と区別されることが分かった。また,「イカレマシタカ」「イカレマシタ↑」など,終助詞とイントネーションによる問いかけによって,前者が待遇価が高いとする意識が見られた。この終助詞使用は,尊敬語の使用の有無よりも,発話全体の待遇価に与える影響は小さい。また,話し相手が敬語使用に強い影響を与える現代においては,丁寧語の使用が待遇行動に大きな役割を果たすが,伝統方言敬語の「オイキタ」「イカシタ」は,「オイキマシタ」「イカシマシタ」のように丁寧語マスをともなった形を作ることができない。このようなことが方言敬語衰退の一因となっていることが考えられる。2010.3.31
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日韓中の外言談話にみる発想と表現―日本語と日本語教育のための基礎的研究 Reviewed
沖裕子, 姜錫佑, 趙華敏, 西尾純二著
『人文科学論集. 文化コミュニケーション学科編 』 ( 44 ) 1 - 25 2010.3
日本,韓国,中国における「旅先で買った小品を同僚に渡す」「指導教員に推薦状を書いてもらう」という依頼を目的とする談話を,著者4人が作例し,各言語の談話の比較対照を行った。前者の談話では,日本語で「土産」と呼ばれる小品の贈り物の性質をめぐって,日本では小品の授受を通して心情共有を目的とするため,小品を通してのコミュニケーションが生じるが,韓国では贈り物としての性質があるため,黙って小品が相手に渡される。中国の場合は返礼としての目的があるため,その目的に応じた言語技術が求められる。また,推薦状を書いてもらう場面では,日本では依頼者の依頼に至る自己都合,韓国では依頼を引き受けてもらったことへの感謝,中国では相手を煩わせることにたる理由が述べられることが,著者4人の作例談話資料から明らかになった。このように,日本,韓国,中国間の事態認識の異なりが,談話の表現や展開に影響する様相を捉えることを本論では試みた。2015.3.15
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再検討・日本語行動の地域性 Invited
西尾 純二
言語 8 - 15 2009.4
従来,ことば使いの地域差についての考察方法は,言語地理学の手法を用いたものが多かった。東西対立型分布や周圏分布といった方言地理学の地域的分布モデルを,言語行動の地域差に適用することについて,再検討の必要性を主張した。感謝や詫びといった言語行動を例にとり,ことばによる意思伝達をする場合,その行動を社会的行動として捉えると,地域によって「上下関係重視型」「ウチソト関係重視型」といった対人関係を考慮した行動傾向が異なりがあること。また地域によって,何かを伝えるときに「言語表現非依存型」「言語表現依存・定型型」といった,意思伝達の際に言語表現に依存する程度の違いがあることを指摘した。また本論文では,地域という観点での言語行動のバラエティ把握以外に,都市・非都市といった,従来から考察の必要性が論じられていた観点によるバラエティ把握についても分析例を提示した。自宅徒歩10分圏内に地下鉄の駅があるか,自宅周辺に農家が多いかといった項目を変数として,都市性の違いによる言語行動の特徴の違いについて,その一端を明らかにした。
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TVローカル番組における方言使用の地域差 Invited Reviewed
西尾 純二
メディアとことば 4 2009.3
ローカル情報番組内における方言の使用状況について,使用される方言形式の言語学的性格,地域差や使用者等に着目して分析を行った。これによって,テレビ番組のなかでの方言使用に地域差が生じる要因と,方言がテレビメディアに浸透するプロセスのモデルを構築することを本論文では目的としている。方言の使用は,放送エリアが広い番組ほど少ないというわけではない。テレビにおける地元方言の使用は,方言タレントを出演させられる番組の予算規模(つまり,地域放送局の経済力)や,地元民がインタビューを受ける場合に共通語にシフトすることができか否かなどの要因が働くことが明らかになった。このような様相から,テレビ上,方言の使用が全面的に規制される段階から,地元民の方言使用を描写する段階,わずかながらアナウンサーも方言を使用する初期使用段階,番組の地域密着性を演出する為にタレントなどの局外の人物の方言使用を活用する段階,タレントだけでなくアナウンサーも方言を使用し,スタジオでの盛り上がりに応じて方言を活用する効果的活用段階といった段階性があることを見いだした。
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NODA Hisashi, TAKAYAMA Yoshiyuki, NISHIO Junji, HIDAKA Mizuho, MIYAKE Kazuko, IDE Sachiko, DAIBO Ikuo, SZATROWSKI Polly
The Japanese Journal of Language in Society 12 ( 1 ) 179 - 183 2009
Publisher:The Japanese Association of Sociolinguistic Sciences
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ブログが広げるコミュニケーションの輪―コメントとトラックバック― Invited
西尾 純二
日本語学 2007.10
ブログ(web log)をコミュニケーションの媒体として捉え,ブログの開設者による表現活動と,その表現に対するコメントやトラックバックという読者の反応を考察の対象とした。本論文の刊行時,ブログの開設数は863万件であり,前年の2.5倍以上の伸びを示した。急激に普及するコミュニケーション媒体が,研究上,どのような問題点を持つのかということが,本論文の論点である。電子掲示板など,テキストベースのコミュニケーションは,人格意識の欠如が起こりやすくフレーミングが生じやすいとされる。しかし,ブログの場合,そうでない部分がある。ブログの開設者はコメントやトラックバックを付ける相手とのコミュニケーションを通して,ブログ上の人格を得る。匿名でブログを開設しても,本名で開設しても,ブログ上の人格が開設者に生じる。このことが,ブログで交流する人々に人格意識をもたらし,フレーミングを抑止していることを主張した。また,ブログは,開設者とコメントメンバーとの間でのメッセージが行われるが,コメントメンバー同士ではやり取りが行わないという約束事が成立していることをなど指摘した。
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待遇表現の量的調査における回答のばらつきについて―標準偏差を用いた分析から得られる知見― Invited
西尾純二
言語文化研究論集 愛知学院大学言語文化研究会 112 - 123 2006.5
待遇表現の量的調査からは,人々が言語表現を表現を場面によって使い分ける傾向を明らかにすることができる。そのような手法を用いた従来の待遇表現研究を鳥瞰し,成果を整理した。そのうえで,本論文では,あまり注目されていない「標準偏差」を用いた待遇表現の分析によって,どのような議論ができるかということを論じている。この議論は,場面によることばの使い分けの傾向に注目するのではなく,傾向の「強さ」についての議論となる。
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NISHIO Junji
The Japanese Journal of Language in Society 7 ( 2 ) 50 - 65 2005.3
Publisher:The Japanese Association of Sociolinguistic Sciences
This paper examines the use of YORU, the auxiliary verb of the minus treatment expression, found in the Kansai dialect. The focus of the analysis is on the expressive nature, particularly the expression process, of YORU as an "act of treatment expression" used by young people in the Kansai region, centering on Osaka Prefecture. Previously, I posited two types of treatment expression: relational and emotional (Nishio, 2003). In the current paper, I argue that YORU can be used as both types of expression. On the one hand, YORU acts as a relational treatment expression of low rank. However, YORU also expresses a minus evaluation and thereby acts as an emotional treatment expression. Although the emotional nature of YORU is likely related to the fact that it is a low-level speech style, I contend that the two are distinct. This point is illustrated by the fact that YORU is used to express "surprise," which is neutral with respect to plus/minus evaluation. The conclusion that the treatment expression system of the Kansai dialect expresses not only human relations but also speakers' emotion presents a new theoretical perspective for the categorization of treatment expression systems.
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伊勢湾岸地域における名古屋方面の言語受容―『名古屋-伊勢間グロットグラム集』からの考察 ―
西尾純二
日本語学文学 三重大学日本語学文学会 ( 15 ) 1 - 16 2004.6
1999年から2000年にかけて行われた「名古屋市―伊勢市間の方言グロットグラム調査をもとに,伊勢湾岸地域における名古屋方面の言語事象の受容状況について,その一端を明らかにした。木曽三川(長良川,揖斐川,木曽川)は,依然として大きな言語的断絶要因として立ちはだかっているが,木曽三川を超えて,名古屋方言を受容する連続性も見られる。本稿で分析対象としたグロットグラム集では,若い世代から徐々に新形式が伝播する分布パターンは,アクセントを除いては見られない。ガ行鼻音は,木曽三川ではなく四日市市周辺で分布が見られなくなること。(ご飯を茶碗に)ツケルやアザ(痣)などは,松阪市から伊勢市にかけては,名古屋方面の形式の影響を受けにくいことといった方言分布の地域的断絶性が確認される。いっぽうで,名古屋方面の(ご飯を茶碗に)ツケルは,地域が南下するにしたがって使用できる場面が変化し,その様相から「安定的受容」「混乱」「不完全な受容」「未受容」という段階性が確認できる。
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静岡県中川根町方言の自発・可能形式「サル」の記述
西尾純二
『静岡・中川根方言の記述』大阪大学大学院文学研究科日本語学講座 1 - 15 2004.2
静岡県大井川中流地域の中川根町藤川地区では,自発・可能形式の助動詞サルが使用されている。しかし,この形式は急激に衰退している。サル形式は,日本各地で見られるがその分布は局地的であり,消滅寸前の状況にある。自発と可能とは動作の実現に動作主の力や意志がどのように関与するかという点において,連続している。上流の井川地区では,可能と自発の両方の意味にわたりサル形式が使用されるが,下流に行くほどサル形式は自発的な意味に限定されてサル形式が使用されることが明らかになった。また,サル形式は基本的には動作実現が動作主の力・意志と関与しないことを表現するものであるが,その中でも動作実現の結果に注目した場合に多用されることを明らかにした。このように,本フィールドにおけるサル形式が,可能自発の広範な用法に用いられる状況から,その意味領域を限定させつつ消滅するプロセスをたどっていることを明らかにした。