科研費(文科省・学振)獲得実績 - 久保 はるか
-
再生可能エネルギー発電施設の適正立地と合意形成に向けた法制度設計
2023年4月 - 2027年3月
学術振興機構 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
島村 健, 白木 彩子, 高橋 裕, 久保 はるか, 児矢野 マリ, 角松 生史
-
過小代表利益を担う行政組織の成長の条件:環境官僚の戦略的行動と行政資源の比較分析
2020年4月 - 2025年3月
学術振興機構 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
久保 はるか
本研究計画では、「環境行政組織の対外的なパワーの源泉として組織に対する信頼性(Reputation)をいかにして獲得しているか、比較研究によって明らかにすること」(科研費申請書より)を目的の一つとしていたが、この点について、カリフォルニア州の気候変動政策を担う行政組織の分析を行い、共編著本において発表した(辻雄一郎, 牛嶋仁, 黒川哲志, 久保はるか編著『アメリカ気候変動法と政策 : カリフォルニア州を中心に』(勁草書房、2021年)(単著:第3章「カリフォルニア州における気候変動防止政策の制度的条件――合議制の行政組織の役割に着目して」)。カリフォルニア州の気候変動政策は、高い専門性と独立性を有する合議制の行政組織(大気保全を担当するCARB, エネルギーを担当するCPUCとCEC)に広範な権限委譲がなされていることが特徴である。これら気候変動防止政策を担う合議制の行政機関は,政策遺産によって獲得した権限と専門性を源に社会的に高い信頼性を確保しており,それによって,科学的根拠に基づく政策形成と政策の安定的な実施を実現できるという好循環を生み出しているといえる。
続いて、2021年6月19日に開催される環境法政策学会・企画分科会「セッションテーマ:グローバルな視点からの日本の環境影響評価制度の再検討」の報告準備を進めた。報告のタイトルは「評価制度としての環境影響評価の可能性と限界」であり、環境影響評価制度の運用面に着目し、行政の意思決定プロセスにおける環境影響評価制度の作用について考察することとした。特に、環境影響評価を、環境省が権限を有する事業所管省の手続きに環境配慮の観点から関与する仕組みであると捉えて、日本の省間調整システムと環境影響評価手続きとの相互作用について、環境大臣意見を題材に分析を進めた。 -
2018年4月 - 2021年3月
学術振興機構 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
辻 雄一郎, 牛嶋 仁, 久保 はるか, 黒川 哲志
カリフォルニア州の法や政策がどのように他州や連邦法に影響を与えるのか、そして、どうして先駆的な取り組みが可能なのかを検討した。この検討を通じて、我が国の気候変動の法と政策に具体的な提言を行った。カリフォルニア州の取り組みは一見すると同州に特有の問題のようにみえるが、日本と同じ問題意識を共有している。各研究者の報告は『アメリカ気候変動法と政策』(勁草書房)に公表した。
-
グローバルな視点からの日本の環境影響評価制度の再検討ー「国際標準」との差異の分析
2017年4月 - 2022年3月
学術振興機構 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
増沢 陽子, 久保 はるか, 遠井 朗子, 児矢野 マリ
国際法上の環境影響評価(EIA)に関し、この分野を牽引する国連欧州経済委員会・エスポー条約について、最新動向も含め実証分析作業を継続した。同条約の締約国会合(オンライン)にて参与観察を行うとともに、条約採択30周年記念パネルで招待講演を行い、専門家と討論等を行った。また、天然資源・エネルギーの利用に関する国際条約のうち、国連海洋法条約の下におけるEIAの実施義務やその実施要請について、最新動向に関する文献調査を行った。これは、日本のEIAに関する現行の法体制の評価における1つの軸となりうる。
生物多様性分野については、生物多様性の配慮をEIAに統合するための具体的政策手法について関連文献等のレビューを行い、国家・国際開発援助機関の実践を標準化し、環境条約の目的とEIAとを関連づける上で、生物多様性条約の任意的指針(2006)が一般に参照されていることを確認した。また、当該指針の構成要素を分析し、生物多様性の配慮を適切に行うため、EIAの制度設計において留意すべき点を同定した。
EUのEIA制度については、戦略的環境アセスメント(SEA)指令の対象となる「計画及びプログラム」の意義に関し、欧州司法裁判所の裁判例及びこれを巡る議論を中心に分析を行った。その結果、SEA指令の対象については、かなり幅広いものを含みうるものとして解釈されているが批判もあることが認められた。これらは、日本で計画・プログラムレベルのEIA制度を考える上で、一つの参考となる。
一方、EIA制度は評価制度の一つともいえることから、評価研究一般に関する議論を整理するために、既存研究の文献調査を行った。とりわけ、意思決定プロセスにおいて 事前評価が果たしうる機能に注目して論点を整理した。また、日本のEIA制度における環境省の関与の実態を把握するために、情報公開請求資料などを活用して分析を行った。 -
グローバル化時代における海洋生物資源法の再構築―国際・国内法政策の連関の視点から
2016年4月 - 2020年3月
学術振興機構 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
児矢野 マリ, 鶴田 順, 堀口 健夫, 伊藤 一頼, 島村 健, 久保 はるか, 石井 敦, 大久保 彩子
研究基盤整備の継続と共に、学会で発表した中間成果をブラッシュアップし、さらなる調査・実証分析の成果も踏まえ、最終成果に向け作業を進めた。第一に、国際規範の国内実施プロセスの第1段階―国際規範(条約、被拘束的な政府間規範)の国内法・政策への編入(incorporation)―について、学会発表の成果を練り全体像を把握した。論点として、科学的な資源管理措置(予防的/生態系アプローチ)、IUU漁業の規制、国内実施の受け皿としての国内法体系・規範構造及び多様なアクターの関与・相互連関を含む国内ガバナンスである。その際、漁業法の大改正(2018年12月)につき正確に理解するため、改正作業に関わった行政実務担当者を研究会合に招聘し講演会を開催した。第二に、編入措置の運用(operation)について、前述第一の成果を踏まえ、分担して実態把握と分析を開始し、研究会合の討論も経て、できるところから順次その成果を整理した。この作業では、①関係機関・団体(水産庁北海道漁業調整事務所、北海道漁業連合会等)のヒヤリングと地域漁業調査(北海道羽幌地域・焼尻島・天売島地域、高知県、三重県)、②政府系研究機関(水産研究・教育機構)の科学者を招聘したゲストセミナー、③国際的に日本の消極的対応が目立つフォーラムとして、北太平洋漁業委員会、地中海マグロ類国際委員会、中西部太平洋マグロ類委員会の資源管理につき、定例会合の参与観察の成果も考慮した。第三に、昨年度までに構築した理論的基盤の上に、上記成果により、国際規範の国内実施のあり方の「適切さ」に関する規範的な分析を開始した。第四に、日本の状況を相対的に評価するため、隣国韓国の漁業法政策の専門家を研究会合に招聘し、第2回国際ワークショップを行った。繰越期間も含め以下2回の研究会合を開催:①7月20-21日(東京)、②2019年2月23-24日(東京)。
-
条約プロセスマネジメント―地球環境保全に向けた諸アクターの分散型応答の影響―
2015年4月 - 2019年3月
学術振興機構 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
久保 はるか
オゾン層保護のための環境条約の実施において観察されたトップダウン型の垂直モデルに対して、昨今の気候変動対策において観察されるような「環境公益・国際規範のマルチレベルでの受容と呼応」について、気候変動と漁業資源管理を例にその現状を検証し、分散的ダイナミズムを如何にマネジメントすべきか、翻って条約レジームや国内政策のあり方に与える影響について考察した。
-
環境条約の日本における国内実施に関する学際的研究-国際・国内レベルでの規律の連関
2010年4月 - 2015年3月
学術振興機構 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
児矢野 マリ, 高村 ゆかり, 久保 はるか, 増沢 陽子, 島村 健, 鶴田 順, 堀口 健夫, 北村 喜宣, 遠井 朗子, 山下 竜一, 亘理 格, 城山 英明, 加藤 信行, 郭 舜, 小林 友彦, 藤谷 武史, 坂田 雅夫, 及川 敬貴, 梅村 悠, 村上 裕一, 伊藤 一頼, 佐古田 彰, 藤谷 武史, 坂田 雅夫
地球温暖化、海洋汚染、生物多様性の減少等、グローバル化した現代社会の環境問題に対処するためには、環境条約と各国の国内法・政策との連結と相互浸透が不可欠だが、その適正な確保は必ずしも容易ではない。本研究はこの問題に対処するため、国際法学、行政法学、行政学、環境法政策論を含む学際的研究として、地球温暖化、オゾン層の破壊、廃棄物・化学物質の規制、海洋汚染、生物多様性・自然保護、原子力安全規制を含む主要問題領域について、日本における多国間環境条約の国内実施及び環境条約の定立と発展に対する国内法・政策の作用の動態を実証分析し、その結果を統合して日本の特徴を解明するとともに、その課題と将来展望を探った。
-
2010年 - 2012年
学術振興機構 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
森田 朗, 金井 利之, 伊藤 正次, 久保 はるか, 田丸 大, 田口 一博, 松井 望
本研究は,1990 年代から現代までに至る「政界再編」と「省庁再編」という2つの再編期に,どのように「政策再編」が生じたのかを理論的・実証的に分析した.これにより,「政策再編」時に通底した制度設計上の論点や課題を把握した.あわせて,将来的な「政策再編」を実施する上での実践的含意・方向性の検討を行った.本研究の成果は,『政策変容と制度設計-政界・省庁再編前後の行政-』(ミネルヴァ書房,2012 年)として公刊した.同書では,「序章政策変容と政界再編・省庁再編」(金井利之)では,政策変容と政界再編・省庁再編の動態と理論的含意を分析した.次いで,「第I部政策の横断的処理」では「第1 章統治機構」(伊藤正次),「第2章予算編成」(曽我謙悟),「第3章総合行政主体」(姜光洙),「第4章統計制度」(松井望)と,政策変容に共通する横断的な処理に関する 4 テーマの考察を行った.次いで,「第II部政策領域の生成」として,「第5章地球環境政策」(久保はるか),「第6章野生動物保護管理政策」(打越綾子),第7章景観政策」(田丸大),「第8章観光政策」(田口一博)と政界・省庁再編期で新たに生成した 4 つの政策領域への分析を行った.「第III部政策の統合再編」では,第9章 原子力安全規制政策」(城山英明),「第10 章規制改革」(田辺国昭),「第11 章通商政策」(金燦東),「第12 章医療政策」(飯間敏弘)と,政界・省庁再編期以前から存続し,同期に統合・再編した 4 つの政策分野への分析を行った.最後に「終章政策再編への制度設計」(金井利之)では政策再編の政治行政上の特性と制度設計上の含意を明らかにした.また,本研究では,成果となる本書をもとに,国内外の研究者による公開研究会を開催し,同研究内の更なる考察と社会的普及を行った.
-
2006年 - 2011年
学術振興機構 科学研究費助成事業 特定領域研究
新澤 秀則, 大島 堅一, 高村 ゆかり, 橋本 征二, 島村 健, 羅 星仁, 久保 はるか, 松本 泰子, 亀山 康子, 亀山 康子
気候変動枠組条約や京都議定書の締約国会議や補助機関会合にオブザーバー参加することによって, 交渉の進捗をつぶさに, かつ総合的に把握し, 合意の評価と, 今後の課題とその選択肢の比較評価をリアルタイムに提示することに一定の貢献をした。京都議定書の運用, 欧州連合, ドイツ, アメリカの政策動向を調査分析し, 国際枠組みに対する意味合いを考察した。政府以外のアクターとして, 欧州連合, 自治体, NGOを取り上げ, 条約交渉や合意したことの実施に関して果たす役割を, 具体的な事例にもとづいて明らかにすることができた。
-
国際環境条約の国内実施過程における政治学・法律学的考察
2002年 - 2004年
学術振興機構 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費
久保 はるか
本年度は、これまで行ってきたオゾン層保護のためのウィーン条約・モントリオール議定書を題材とした条約の国内実施過程に関する研究の取りまとめを行い、論文にまとめた。
本研究は、地球環境問題に対して国内行政がどのように対応しようとしているか、そしてどのような影響を受けているのか、地球環境条約と国内行政とが接する「条約の国内実施過程」に焦点を当て、分析することを目的とした。まず、「条約の実施過程」を次のような構成要素に分解し、「条約の国内実施過程」の分析枠組みを提示した。第一に、国際交渉を通じて形成された政策課題、すなわち国際会議で採択された条約・議定書を国内で「受容」する過程、第二に、条約・議定書によって課された義務内容を国内対策に翻訳・変換する過程(「国内立法化」、当該課題の既存の国内政策への「位置づけ」、当該事務を所掌する担当部局の「配置」が行われる)、第三に、国内対策を「執行」する過程である。次に、日本において、どのような要因が履行確保を担保したのかを明らかにするために、国内での履行を担保する要素を、(1)国際合意を国内政策として受け入れようとする政府担当官庁の「遵守の意思」と「国内関係者の支持」、(2)国際合意の内容と照らして、履行確保可能な仕組み(法制度)がつくられたかという「法制度の実効性」、(3)実施過程における国内の行為主体の対応・「行動変化」の3点に分解して、条約の国内実施過程の各段階において、これらの要素が確保されたか否かについて検証した。
本研究では、条約の国内実施過程が、所与の諸規律の集合からなる「政策の構造」によって規定されるだけでなく、相当程度、「実施の構造」における主体間の相互作用を通じて形成された可変的・動態的な社会のコード(技術、企業、業界、ないし国際貿易における経済性のコード)に規定されるということを指摘することができた。