科研費(文科省・学振)獲得実績 - 小堀 裕己
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ナノギャップ電極を用いた単一及び少数結合型ハーフメタル・ナノ微粒子の物性計測
2009年4月 - 2012年3月
学術振興機構 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
走査型電子顕微鏡の装置内に組み込まれたカーボンナノチューブ・プローブを用いて、単一および少数のナノ微粒子をナノギャップ電極中に設置したナノ微粒子計測用デバイスを作製した。そのデバイスを用いて、マグネタイト・ナノ微粒子の導電特性を計測した結果、接触抵抗の影響が非常に大きいことがわかった。その問題を克服するために、RFマグネトロンスパッタリング法を採用し、ナノギャップ中に少数のマグネタイト・ナノ微粒子を埋め込んだ接触抵抗の小さいナノ微粒子計測用デバイスを作製する事に我々は成功した。その電気および磁気伝導特性を測定し、その輸送機構を明らかにした。
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生体機能性ポリマー鎖を用いた半導体ナノ結晶の配列制御
2003年4月 - 2005年3月
学術振興機構 科学研究費助成事業 萌芽研究
本研究は半導体ナノ結晶がポリマー鎖を介在して結合した系を形成し配列させることを目的としている。生体ポリマー鎖を介在して結合したCdSナノ結晶と有機色素分子の系において約40%のエネルギー移動が起こっていることを示した。これらの結果は、生体センサーを開発していく際の設計指針を与えるものであると考えられる。
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縦型二重量子ドット中の電子の電子間相互作用とダイナミクスの研究
2000年4月 - 2002年3月
学術振興機構 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
1)GaAs/AlGaAs二重ヘテロ構造を用いて、縦型二重量子ドット構造を作成し、2層のドットの電子による吸収ピークを観測した。このドット構造における縦方向のバリア層であるAlGaAs層をパルスバンドギャップ光で励起した場合、励起強度、遅延時間変化とともにピークシフトを観測した。このピークシフトには2層のドット間の結合状態に関する情報が含まれることがシミュレーションより分かった。2)さらにこの結合状態変化を定量的に調べるため、短パルスレーザーを用いて高速時間分解光ルミネッセンス測定装置および時間分解光検知サイクロトロン共鳴測定装置を作成し、量子ドット構造作成の元となるGaA/AlGaAsヘテロ接合試料中の2次元電子系(2DEG)の発光ピーク(Hバンド)の励起光依存性を調べた。Hバンド発光が励起光の波長に強く依存すること、発光の時間変化が短パルス励起光以外にAlGaAs層を励起するために加えた光照射により特徴的なテイルを持つことが分かった。
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高速時間分解システムによる量子ドットのテラヘルツ光吸収測定
1998年4月 - 2000年3月
学術振興機構 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
単一および二重へテロ構造上に作成したドット配列のテラヘルツ光吸収を調べた。単一へテロ構造上のドット配列のテラヘルツ光吸収の励起強度依存性より,光励起下での高磁場側へのピークシフトが生ることを見いだした。またシフト量が励起強度に比例し,一定以上の強度ではバルクのGaAsの有効質量0.067m_0のサイクロトロン共鳴位置に収束していることを明瞭に観測出来た。これは光励起による垂直方向の閉じ込めポテンシャルの減少で説明できることを示した。さらにバンドパスフィルターを用いた光励起下でGaAs層のみを励起した場合でも、やはりピークシフトが生じることが分かった。
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特殊界面を有する半導体のフォトルミネッセンスに対する共鳴サブミリ波変調効果
1998年4月 - 2000年3月
学術振興機構 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
マイクロ波および遠赤外レーザーを基本とする光検知サイクロトロン共鳴(ODCR)装置の組み上げと整備を行った。また、小型高感度分光器を採用したマルチ側光システムを完成させた。これらの装置を用いて行った研究成果の概要は以下の通りである。(1)基板上に成長させた薄膜のInGaAsに関するODCR測定を行い、薄膜と基板の界面には薄膜内部とは異なる不純物の偏析や歪みに起因する特殊な電子状態が存在することが判明した。(2)CaAs系の2次元電子系を基本とする量子ドットを作製し、それに関するODCR測定を行った。その結果、量子ドットの界面ポテンシャルが外部からの光励起によって影響を受け、内部に閉じ込められた電子状態が変調されることが判った。
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単一量子ドットならびに量子ドット配列への高周波印加効果の研究
1997年4月 - 1998年3月
学術振興機構 科学研究費助成事業 重点領域研究
GaAs/ALGaAsヘテロ構造上に電子ビーム露光とウェットエッチングにより量子ドット配列構造を作製した。現時点ではドットサイズは最小500mm程度までで、3×2mm^2の面積に10^6個の比較的均一度の高いドットを作製することが出来るようになった。しかしながらこのサイズは形状からみたものでありドット中の電子の感じるの閉じ込めポテンシャルのサイズはかなりこれより小さいものと考えられる。このような比較的大きな閉じ込めポテンシャルにおいては、閉じ込めポテンシャル形が放物線型からずれることが期待でき、これに伴う効果が期待される。実験は放電型遠赤外レーザーを用いて4.2Kにおいて行い。磁場は6.5Tまで印加した。時間分解測定においては励起光源としてキセノンフラッシュランプを用いた。このような条件下でドット配列の遠赤外磁気光共鳴吸収測定を行った。
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Zeeman磁気光分光を用いた半導体中の磁場誘起-金属・非金属転移
1996年4月 - 1998年3月
学術振興機構 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
Zeeman磁気光分光を用いた半導体中の磁場誘起-金属・非金属転移を調べるために、半導体として、伝導電子の有効質量が等方的で、有効質量近似が極めて良く合うGaAsを選択した。GaAsの零磁場での非金属-金属転移ドナー濃度は1.6×10^<16>cm^<-3>である。我々は、ドナー濃度を10^<14>cm^<-3〜>10^<18>cm^<-3>までの範囲でエピタキシャル成長させたn型GaAs試料を10種類以上用意した。それぞれの試料について、1s→2P_<+1>遷移に対応するゼーマン磁気光吸収の磁場及び温度依存性を詳細に調べた。ゼーマン吸収が観測されるときは、ドナーに電子が束縛されている事を意味し、その時、半導体は非金属状態にある。逆に吸収線が観測されないときは、束縛状態が存在しない事を意味し金属状態にある。ドナー濃度の増加に対して線幅の著しい増加が観測され、ある臨界濃度で吸収線は消失した。また、磁場の増加に対して線幅の著しい減少が確かめられた。磁場の印加にともなう金属・非金属転移濃度の高濃度側へのシフト、及び、磁場印加による金属-非金属転移を観測した。線幅をドナー濃度、温度、磁場に対する関数として実験的に導いた。これを、定量的に説明するために、我々はトーマス・フェルミ近似の範囲内で、変分法を用い、非金属-金属転移を起こすドナー濃度を計算した。信頼のおける変分試行波動関数を選び、最初に、磁場中でスクリーニングのない場合について計算し、近似精度が良いとされるLarsenによる計算結果とほぼ一致した。次に、零磁場でスクリーニングのない場合について調べ、任意磁場でスクリーニングがある場合へと拡張した。それと同時に、変分試行波動関数として水素原子型、調和振動子型の場合についても計算し、比較した結果、我々の用いた変分関数が、スクリーニングのある場合も、良い精度を与える事が確認された。この時、注目すべきは、磁場がある場合、絶対零度では常に束縛状態が生じる事である。すなわち、常に非金属状態にあり、有限温度で、はじめて金属状態が存在する事である。
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量子ドットへのマイクロ波照射効果
1996年4月 - 1997年3月
学術振興機構 科学研究費助成事業 重点領域研究
2種類の量子ドット構造(単一量子ドット構造と量子ドット配列構造)を作成し各々にマイクロ波を印加した実験を行った。a)マイクロ波印加用のマイクロストリップラインを有する単一量子ドット構造においてはクーロン障壁振動のマイクロ波変調信号の周波数依存性を調べた。印加周波数範囲は1GHzから10GHzであるがこの周波数範囲ではマイクロ波の印加効果は古典的なものであり振幅電場がドット形成のためゲートに印加している負の電圧に重畳されゲート電圧の変調として現われている。このような解釈で各クーロン振動ピークの分離が説明できた。にもかかわらずクーロン振動変調に周波数依存性が観測された。これはドットを含めたマイクロ波回路のインピーダンスが発振周波数に対し共鳴的に変化することにより理解できた。これは単一量子ドット構造設計ならびに応用に関して重要な示唆を与えるものと考えられる。b)量子ドット構造を数千万以上規則的に並べた量子ドット配列構造の遠赤外磁気光吸収測定にはエッジプラズモン的に振る舞うモードがある事は知られている。このモードの吸収ピークのピーク位置ならびに吸収線形が量子ホール効果状態にあるエッジ電子のフィリングファクターを反映し振動的に振る舞うことを実験的に観測できた。Heitmann等は遠赤外フーリエ分光法により吸収ピークのエネルギー位置を一定磁場下で調べ磁場に対し振動していることを報告している。我々は遠赤外レーザーを用いて一定波長下で吸収ピークを観測しその磁場変化をもとめ振動を観測した。この方式はSN比もよく時間分解測定も可能なためエッジ状態にある電子間の相互作用理解に対しより多くの有益な知見を与えるものと期待できる。現にパルスバンドギャップ光励起後の吸収の時間変化信号において大きなピークシフトを観測しているがこれも電子電子相互作用の変化に伴うものと思われ量子ホール効果の理解に寄与を与えるものと思われる。
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直接接着した半導体界面に関する光学的・音響的基礎物性の研究
1995年4月 - 1997年3月
学術振興機構 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
最近、半導体を直接接着する技術が確立され、その応用も考えられるようになってきた。接着機構の解明が進み、その機械的強度もバルクと大差が無いことも解ってきた。そうなるとエピタキシ-技術や拡散技術に代って、同種の半導体同志、異種の半導体間、酸化膜を挾んだような界面を特別に制御した半導体同志を接着したものといった新しい素材としての可能性が大きく広がっていく。一方では、半導体応用素子の細密化が進むと、電極および電極-半導体界面の抵抗値を少しでも低下させるための研究やエピタキシャル成長させた試料の界面に関係する研究および不純物の偏析の問題などが重要になってくる。[1]直接接着したシリコンの輸送特性に対する接着界面の効果を明らかにするために電気抵抗の温度依存性を測定した。測定は接着界面に平行に電流を流す場合と界面を横切る方向に流す場合の2通りの配置で行った。平行に電流を流した場合には、抵抗は50Kまでなだらかに減少し、それ以下で急激に増加する。一方、垂直に電流を流した場合には、接着界面の効果を反映して温度の下降とともに一方的に抵抗は増加することが判明した。[2]金属と半導体の界面が存在する場合の特性を研究するために、シリコン表面にいろいろな厚さを持つTiを蒸着した試料について電気抵抗の温度依存性を測定した。Tiの膜厚がある程度厚い場合には、試料の輸送特性は全温度域で金属的であり、膜厚が非常に薄くなると250K以下でTiSi_2の縞状構造を反映した活性化型の伝導特性が観測された。250K以上の温度では基板のシリコンを迂回する電流が観測され、その界面抵抗を支配するショットキー障壁の高さは0.6eVであることが分かった。また、熱処理をすることによってTi膜、TiSi_2の相対的な厚さが変化し、抵抗値に大きな変化をもたらすことが判明した。[3]エピタキシャル成長させたZnSeやGaAsの界面に関する格子不整合や格子欠陥に関する問題およびCdTeにおける不純物の偏析の問題を遠赤外磁気光共鳴や光検知サイクロトロン共鳴法によって明らかにした。
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微小量子ドットのクーロン振動におけるマイクロ波応答
1995年4月 - 1996年3月
学術振興機構 科学研究費助成事業 重点領域研究
マイクロ波印加用にマイクロストリップライン構造を持つ量子ドットを設計し、その構造をGaAlAs/GaAsヘテロ接合上に作成しコンダクタンス測定を試みた。マイクロ波印加を試み、印加による影響をコンダクタンスに現れるクーロン振動の変化という形で観測した。マイクロ波を印加しない場合、量子ドットを介した電流を量子ドットを形成する障壁に対する電子の共鳴トンネル効果により運ばれる。微小量子ドットの場合、その容量が非常に小さくなるため1電子の増加による帯電エネルギー上昇が大きくこれにより更なる電子のトンネリングが妨げられてしまう。このクーロン障壁効果の為に電流は量子ドットに印加するゲート電圧の値に対しほぼ周期的に共鳴型の振動ピークとして現れる。我々はこのクーロン振動ピークの形がマイクロ波印加により変調されることを観測した。印加したマイクロ波の周波数は5.40GHzまでの比較的低い周波数を用いた。マイクロ波の振幅強度を上げていくと共にそれぞれのピークの幅が広がり500μV以上の強度に対しては明らかにピークが2つに分離することを観測した。ピーク分裂のマイクロ波強度依存性のデータと簡単なピーク形のマイクロ波変調シミュレーションによりピーク分裂の原因はマイクロ波の電場成分が印加したDCゲート電圧に重畳されゲート電圧を変調してしまうことにあることを明らかにした。さらにこのシミュレーションを実験データに適用することで決定の困難と思われていた量子ドット中の電子系の有効温度をより高い確度をもって決定することを可能にした。現在はより高い周波数印加によりフォトン吸収効果がクーロン振動に及ぼす効果を観測するための準備を進めている。
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半導体中の衝突電離過程に基づくカオス発生機構の研究
1993年4月 - 1995年3月
学術振興機構 科学研究費助成事業 一般研究(C)
単結晶半導体中のドナー不純物に低温において束縛されている電子は外部から印加された電圧により伝導電子の衝突を受け束縛状態から励起される。敷居電圧においてこれが雪崩的に起こり大きな伝導度の変化を生じる。この良く知られた衝突電離過程は比較的低電圧のもとで電流-電圧特性に負性抵抗領域を生じる。この領域ではドナー電子の生成-消滅機構により振動を示しカオス的な振舞いを示す。このことはこれ迄に青木等により精力的に研究されてきた。我々は高純度多結晶InPにおいて電流-電圧特性に自発振動を観測し電圧とともにカオス的な振舞いを示すことを見いだした。しかしながらこのカオス的振舞いが多結晶固有のものなのか上に述べた単結晶半導体と同一の機構によるものかは明かではなかった。そこで最初にこのカオス的振舞いを生じる非線形抵抗の原因を探るため伝導電子の密度,状態分布を磁場中でのフォトルミネッセンスと電流-電圧特性測定により調べた。結果次の様なことが分かった。1)電子分布を反映する電子温度の電圧依存性は単結晶試料とは異なり特徴的な2個のTAフォノン散乱による電子温度上昇の抑制がみられない。2)これは多結晶試料においては結晶性の悪い粒界領域に電圧が印加されるためと考えられる。この領域の幅は一般に10nm程度でありこの領域内ではフォノンの長波長成分は存在出来ないために電子-フォノン散乱が単結晶領域とは異なる。また電流-電圧特性測定からは用いた試料の粒界の障壁の高さが10meVと小さくドナーの束縛エネルギーと同程度であることが分かりこの試料の特殊性がうかがえた。以上より多結晶InPでは単結晶試料と異なり粒界領域が電流-電圧特性測定に大きな影響を及ぼしていることが分かった。
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半導体中電子正孔プラズマの輸送現象についての研究
1992年4月 - 1994年3月
学術振興機構 科学研究費助成事業 一般研究(C)
半導体中に生成された高密度電子正孔プラズマが試料中をどのように広がっていくかを観測し、拡散の機構を解明するのが本研究の目的である。我々はGeとGeAsに対して実験を行った。Geに対しては遠赤外磁気光吸収を通してプラズマの非常に速い膨張にともなう自由励起子の速い拡散を観測した。さらにこの励起子の拡散速度が磁場により減少することを見出し、プラズマの膨張が磁場によって押えられることがわかった。一方GaAsに関しては電子正孔プラズマを測定する可能性のある光検知遠赤外サイクロトロン共鳴の実験装置を作成し共鳴信号を測定した。Geは厚さ0.4mmの試料を用意し,まずフォトルミネッセンス観測を行った。この結果薄い試料では表面再結合のため、励起子濃度の上昇が押えられていることがわかった。さらにこの試料について遠赤外吸収を行い励起子によると思われる信号を観測した。これは遠赤外光の波長変化により確認をした。これらの知見に基づき遠赤外吸収の時間、空間分解測定の結果を解釈した。遠赤外吸収で観測している信号は自由励起子であり、その拡散速度が磁場の印加にともない急激に減少している。特に零磁場での拡散速度は7×10^3cm/sと速く、高密度プラズマから自由励起子が飛び出しているか,非常に速く拡散するプラズマの後を自由励起子が追随しているかのどちらかであると考えられる。以上,本年度中に半導体中のプラズマの拡散機構について解明する一歩として、プラズマに付随する励起子の拡散現象を研究し、光検知遠赤外サイクロトロン共鳴の装置を作り、本邦で初めて信号を測定した。
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シリコン中の水素原子:ミュ-オニウム物性への足がかり
1990年4月 - 1992年3月
学術振興機構 科学研究費助成事業 一般研究(C)
シリコン中の不純物が水素の注入により不動態化することが知られているが、我々はその機構を明らかにするため、抵抗と赤外吸収の測定を行った。さらにシリコン表面に対する水素の効果について情報を得るため多孔質シリコンの研究も進めた。表面より2μmまで不純物(B)をイオン注入した試料を水素プラズマ中で処理することによって水素を注入した。その結果190℃付近で処理した試料が最も大きな抵抗の変化を示した。さらにこの試料について赤外吸収を測定したところ1903cm^<ー1>にBーH伸縮モ-ドによると思われるピ-クが観測され、不純物の近傍に水素が入っていることがわかった。抵抗の変化と赤外吸収量とは線型の関係があり、水素が不純物と対を作ることにより抵抗の増加が引き起こされている。シリコン表面における水素の振舞を調べる目的で多孔質シリコンの可視域における発光と赤外吸収を測定した。P型シリコンを陽極として陽極化成法により多孔質シリコンを作製した。赤外吸収の測定より試料表面が水素によっておおわれていることがわかった。紫外線の照射により肉眼でも観測可能な発光が700nm付近で見られた。この発光の機構については3つの可能性がある。1つはシリコンの細線の形成による量子効果、2つ目は表面水素によるボリシラン的なバンド構造の変化、最後は表面のアモルフォス化である。どの可能性が発光の起源となっているのか見極めるため、現在、発光と吸収の測定を進めている。
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光検知サイクロトロン芝鳴による結晶界面の基礎物性の研究
1990年4月 - 1991年3月
学術振興機構 科学研究費助成事業 重点領域研究
1)ゲルマニウムおよびシリコンに関する光検知サイクロトロン共鳴(ODCR)の結果、n型およびp型のゲルマニウムに関する実験結果より、自由キャリヤ-と束縛発光体との相互作用における衝突解離過程では同種粒子同志の衝突が支配的であることが明確になった。また、通常のサイクロトロン共鳴にくらべて、ODCRでは正孔の高調波共鳴が極端に強く出ることを観測し、この機構の解明から非平衡正孔の価電子帯内における分布の様子を明確にした。2)ニッケル・シリサイドの輸送現象とODCRの結果ニッケル・シリサイドに関する電気抵抗およびHall係数の温度依存性を8ー300Kの間で測定した。試料1はp型Siの上にNiを1000Å蒸着しただけのもので、試料2はそれを800℃で30分間熱処理したものである。この熱処理によって、NiはNiSi_2に変化する。試料1は温度の下降とともに、電気抵抗は直線的に減少し、30K以下で飽和するという典型的な金属の電気抵抗の温度依存性を示す。ところが、試料2では200K付近で抵抗にステップ状の増加が見られる。一方、Hall係数も同じように200K付近で顕著な飛びが観測された。そこでSQUIDによる磁化の温度依存性の測定を行った。その結果やはり200K付近で常磁性から強磁性への転移と思われる磁化の異常が観測された。このことから電気抵抗やHall係数に見られる異常はおそらく磁気的な相転移と関係しているものと考えられる。今後、これら二種類の試料に関するODCRの実験を行うべく、高純度の試料を準備中である。